コラムバックナンバー
メールマガジン2014年8月27日号より a2i代表 大内 範行
最近、アナリティクスのチームを企業の中で、どこに作ればよいのか?そういった課題を考える機会が増えてきました。ここ数年で、データ分析の重要性が飛躍的に増したことは、うれしい状況ですが、一方で、データ分析をめぐる企業内外のステークホルダーが増え、コミュニケーションが格段に難しくなっていると感じています。そんな中、最近少しづつ目にしているのが、情報システム部と、事業部門との綱引きです。格好いい言葉を使わなければ、この2つの部門はことウェブをめぐるビジネスにおいては、相当仲が悪い感じです。本来は、技術を持たない事業部側を、IT部門が助けて進めればお互いの強みを活かせてハッピーなはずなのですが、うまく行きません。
典型的な例を2つほどあげてみます。
1) 事業部側が、A/Bテストの実施などサイトにマーケティングツールを導入したいが、IT部門側の理由で簡単に実施できない。
2) IT部門がデータ分析プラットフォームの環境整備を進めようとするが、事業部側が勝手にツールを導入して分析を進めようとする
データ解析にはテクノロジーが不可欠です。しかし、基幹システムと同じレベルで管理されても、スピードが遅すぎます。マーケティングツールは、クラウド化や無料化がどんどん加速していますので、予算的にも事業部側が独自に導入できるレベルになっています。
一方で、技術スキルや経験が乏しい中で、Javascriptを変更して、トップページが表示されない、という事態も予想されます。顧客データの流出も大変な問題です。ネットビジネスの重要性が増した今、「起こしてはいけない」問題として、全社横断的に管理ができる部門=情報システム部で進める、という意見も強いでしょう。
ビッグデータの時代、情報システム部もデータ分析に積極的に取り組む時代かもしれません。しかし、データ分析からビジネスインパクトを残せることが目標ですから、そのミッションは事業部側にあります。情報システム部側から提案しようにも、事業部側からは門前払い、という状況です。
理想的には、強いマーケティング部門があればCMOの管理下、または経営企画部など経営陣に近い場所に設定するのがよいのですが、一足飛びにその結論に行くには、人材も含めて相当パワープレーが必要となります。まだそこまで踏み切れないという企業も多いでしょう。
はたして事業部側か、情報システム部側か?
ミッション、体質、スピード、顧客との距離を考えれば、アナリティクスのチームは事業部側にあるべきですが、技術、プラットフォームの管理、知見の共有、全社横断的な取り組み、と考えれば情報システム部など事業部とは独立して必要です。
では情報システム部で、本格的にアナリティクスのチームを持って機能している事例が日本にあるのでしょうか?
私が知る範囲では、先日のサミットでご講演いただいた大阪ガスさんが、まさにその事例です。情報通信部という中に、ビジネスアナリシスセンターがあります。
しかし、このケース、実は簡単に「ああ、じゃあ情報システム部でいいじゃない」と考えてはいけないケースです。所長の河本薫さんの15年の軌跡を見るに、アナリティクスのチームを社内に認知させるためには、まさに血の出るような努力をしてきましたし、従来の情報システム部とは異なる独自の文化とコミュニケーションを実現しています。
このコラムでは書ききれませんが、考えれば考える程、アナリティクスのチームは、とても既存の組織の枠組みで当てはめるべきものではありません。優秀な人材が強力なリーダーシップを持って、泥臭く社内コミュニケーションの壁を克服していく。どの部署にあろうと、アナリティクスのチームは、社内の新しい独立国のように、強い覚悟が必要だと思います。それだけに、みなさまにとっても、今後チャレンジする価値のある役割ではないかと思います。
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