コラムバックナンバー
メールマガジン2014年8月20日号より 石井 陽子
ビッグデータの活用は、既存顧客のロイヤルティアップにとても有用と言われており、私の元にもそのようなご相談が増えてきました。
しかし、ご相談の裏にはこんな期待が見え隠れしています。
・ 購買データや、デモグラフィックデータ、来店履歴やサポートセンターへのコンタクト履歴など、顧客一人一人の全てのデータが連携できれば顧客のロイヤルティが上がるだろう。
・ 全てのデータを紐付けて片っ端から分析したら、きっとすごいマーケティングプランが出来るに違いない。こうしたご相談があった時、わたしはあえてお聞きしています。
『あなたの会社における、ロイヤルティの高いお客様とはどのようなお客様のことを言いますか?』
これはつまり、ロイヤルティが上がるというのはお客様がどのような行為をすることであるのか、仮にそれをデータや指標として表すとしたら、どのような数値が高い(または低い)ことであるのかを問うているわけなのですが、これが意外に答えられない方が多いのです。
もしそうだとしたら、多額の投資をする前にまず、みなさまの会社の顧客ロイヤルティとは何かをきちんと定義することから始めてみてください。
なぜなら一般的に、顧客ロイヤルティとは、ある企業やサービス、製品に対する『忠誠』で、概ねそれは反復的にそれを選好することなどを指しています。しかし、この忠誠が何を示すかは、企業やサービス特性によって異なることがあり得るからです。
例えば商材が家の場合。
家は一生に1度の買い物である場合が多く、そのロイヤルティは、『反復的に選択する≒購入回数』のようなものでは測れません。
また『購入単価』においても、世帯年収など、家庭のお財布事情などに影響されてしまうので、『ロイヤルティが高い』と『高い家を買う』というのは別問題になることもあります。結婚式場なども同様のことが言えます。
仮にこのようなケースに当てはまる企業やサービスが、購買履歴や購買単価を紐付けたり、分析したりすることに多額の投資をしても、企業の収益改善につながるようなプランは作れないでしょう。
重要なのは、顧客ロイヤルティを上げようとしているビジネスが、何をもってロイヤルティが上がったということにするのかを定義しておくこと。これによりビッグデータ活用に対する投資配分が不適切になってしまうかもしれないリスクを防ぐのです。
ちなみに、今回ケースとして挙げた『家』を商材としている某ハウスメーカーは、契約者のロイヤルティが高いと隣近所や知人の方に紹介するという行為をすることが分かっていたので、その行為があることを『ロイヤルティの高いお客様』と定義しました。そして、Net Promoter ScoreR (略称NPS)※をロイヤルティ指標として設定しており、契約者のデータとNPSのアンケート結果を紐付けることから始めました。
契約者のデータには受注金額や契約商品等は入っていませんでしたが、連携できたデータの中でもNPSとの相関性が高いいくつかの軸(要因)が見つかり、ロイヤルティをより高める(または低いところを改善する)にはどうしたらいいかを検討することができました。
アンケートデータと顧客データのみを連携させるというスモールスタートで分析を始めていても、ロイヤルティが上がるという行為がどのようなものであるかを予め定義していたために、よりコンパクトで効率的な投資ができている好例です。
※NPSは『ある企業やサービス、製品などを家族や友人、同僚に勧める可能性はどのぐらいありますか』という問いに0~10点の11段階で評価してもらいます。ロイヤルティマーケティングの権威であるフレッド・ライクヘルドが、顧客ロイヤルティに関する研究を20年以上にわたり続けた結果導き出した顧客ロイヤルティを測る指標としてグローバルで6000社以上の企業が経営指標として用いています。
みなさんの会社の『顧客ロイヤルティ』とは何でしょうか?今一度考えてみてはどうでしょうか?
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