コラムバックナンバー
メールマガジン2014年6月10日号より 真摯 いちしま泰樹
先日の「アナリティクスサミット2014」、基調講演の大阪ガスの河本氏のお話は、組織の中で分析専門のチームとして活動する際の苦労がじんわりにじみ出た、非常に示唆に富んだ内容でした。その基調講演の中で、「勘と経験と度胸(KKD)を侮ってはいけない」という話題が出てきました。
実はこの「勘と経験と度胸」の話題は、昨年の「アクセス解析サミット2013」でも、コマースデザインの坂本氏が近い内容をお話しになっています。昨年の坂本氏のお話は、「一人EC店長」の貴重な一次体験は全体を最適化できる強みだ、という内容でした。今年の河本氏のお話では、分析者が陥りやすい勘違いの一つとして出てきたものですが、お二人とも共通しているのは、現場の勘と経験と度胸「も」重要である、というところです。
少々乱暴かもしれませんが、経験はデータ、勘は仮説に置き換えられるのではないでしょうか。
経験は、計測されていなかったり数値に置き換えられていなかったりするものの、一定期間に特定領域で得られた貴重な一次データです。その人の脳にしか存在していなければデータと呼べないかもしれませんが、そこは今回は目をつぶってください。一方、勘は、その経験に基づく判断や仮説です。
経験を計測蓄積し、いつでも取り出せるようにしたり、ドキュメントにまとめれば、立派なデータです。経験を積んだ職人の「勘」も、データ分析をする人たちの「仮説」の思考回路と、大きく変わらないように思います。
河本氏がおっしゃるように、分析者は「フォワード型」になって、より現場での課題発見や意志決定に関わるようになったり、現場の人たちに活用できる仕組みを作ることができれば、現場の人の勘や経験もより強固になり、幅も広がります。
ただ私が思うに、フォワード型の分析者もまた、職人的な存在に近いのではないでしょうか。少し特殊な技量を持ち、現場にも顔を出して課題の種を拾いつつ、社内外コミュニケーションでもリードできる人というのは、やはり希有な存在です。
分析手法や過去事例は、ある程度の仕組み化で整えることができますが、課題の種の拾い方や仮説の立て方はやはり属人的、職人的なものです。
属人的な部分をどこまで汎用化できるか、社内に共有や展開できるかが、私たちの進む道に隠れている課題なのかもしれません。
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