コラムバックナンバー
メールマガジン2013年12月3日号より 真摯 いちしま泰樹
先日11月26日にa2iが開催した特別セミナー「今できる最新カスタマージャーニー分析」で、印象に残ったキーワードがあります。といっても目新しいものでもユニークなものでもありません。「顧客の洞察」というキーワードです。私たちは、顧客洞察の基本に立ち返らなければならない、と感じました。
ここで言う顧客の洞察とは、データだけでは見えない顧客の心理まで含めた推測です。
まだ「アクセス解析」がここまでマーケティング側面で活用されていなかった十数年前、ウェブの領域での顧客の洞察は、発注者やサイト制作のプロデューサー、ディレクターなどが顔を突き合わせて「ああでもない」と意見を交わして取り組んでいました。費用に余裕があれば、リサーチを行ったり、プロトタイプでユーザビリティテストを行ったりしましたが、やはり中心は過去の経験と机上の激論だったはずです。
自分たちが妥当と考える根拠を得られるには費用も工数もかかるので、やむなく省略することはあっても、しっかりしたサイトはそういった顧客洞察をじっくり行っていたことと思います。
その後、アクセス解析ツールが普及してカジュアルに利用できるようになり、数字やデータを根拠に活用する機会が増えました。「こういった流入を増やそう」「このコンテンツの閲覧をより増やして成果につなげよう」と、現状からの改善の根拠やベンチマークとして、活用されているはずです。
ただ、数字ありきで、もしくは数字だけの根拠で、プロジェクトが進められるというケースが増えただろうとも感じます。ユーザーの理解や顧客の洞察に深く踏み込まなくても根拠とできてしまう、それは「容易に数字が見られること」の弊害でもあります。
個人的な経験を書いてみます。大学にいたとき、心理学に近い領域で(正確には教育学です)質問紙による調査と集計、分析を行って考察するという内容の卒業論文を書きました。最終的には数値データを中心にした根拠を元に論文を展開するわけですが、すべての調査サンプルの自由記述なども把握しているので、「数値データ」の裏側にある「回答者の思わんとするところのニュアンス」は、つかみやすかったですし、納得できたものだったと記憶します。
2000年代前半、まだGoogleアナリティクスが登場していない頃のアクセス解析は、Apacheなどのサーバーログを扱うことが多くありました。数値の集計だけではよくわからないので、実際のサーバーログを眺めては、「○○というキーワードでやってきたこの人は、ページのAとBとCを順に閲覧して、そこで離脱してしまうんだ」などと個別の訪問ごとの行動を追いかけたりしました。集計データだけではわからないニュアンスを、いくつかのユーザーをピックアップして行動を把握しようとしていたのです。
ユーザビリティテストでも、5〜6名の被験者を対象にするだけで、非常に多くの情報を得られました。a2iが実施するセミナーで参加者にご記入いただく回答でも、評価の数値は自由回答の記述があってはじめてニュアンスがつかめます。
そういった、数値だけでは把握できないニュアンスを、「アクセス解析」では少しおろそかにしてしまった面があるように思います。合計の数値や平均値だけでテクニック的に判断しがちな面も少なからずありました。
もちろん、アクセス解析ツールとしての機能的な限界も承知しています。マーケティングで扱うデータ量も圧倒的に増加しました。しかし、「個の行動や反応を追いかけて、どう認識されているか、どう考えているのか」を推測することの重要性は、変わっていません。
セミナーでも話が出てきましたが、オンラインとオフライン、複数のデバイスをまたいだ「ユーザー軸の分析」を可能にする環境を整えるには、時間も費用もかかります。まずはできる範囲から、早く、安く、です。ユーザーの行動の全体像をイメージして、「いま取り組んでいるアクセス解析ではこの領域までだ、それ以外の領域ではどうなんだろう」という思考を、少しずつ取り組みにつなげていかなければなりません。ハードな取り組みですが、「顧客の洞察」に「技術」が容易に力を貸してくれる時代は、まもなくなのだろうと思います。
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