コラムバックナンバー
メールマガジン2013年10月8日号より 真摯 いちしま泰樹
私の会社(真摯)では、ウェブを中心としたコンサルティング業を営んでいます。マーケティング視点と分析データの根拠を元に、日々提案を行っているわけですが、ここ最近は「データ(数字)に表れない要素にちゃんと気づくマーケターでありたい」と改めて思うようになりました。
データや数字は、施策の結果や市場動向や調査結果など、性質が異なります。また、数字は「もっともらしい顔」をしていながら、ときどき誤解を生んだり、偶然その数字だったり、赤の他人だったり、他に真実を隠し持っていたりします。
ですから、私はデータや数字だけで判断することは極力避けています。データからの発見ももちろんあるのですが、それよりも目的や意図をくんだり、自分の考えが先でそれを支えるのがデータだったり、「そもそもデータに表れていないことが他にあるんじゃないか?」とそれを探るように心掛けています。
■「数字よりも皮膚感覚」
先日、数年前に読んだ小山薫堂さんの本『考えないヒント』を読み返しました。その本の中で、数字に対する彼のスタンスが述べられています。
—
(テレビの一分ごとの視聴率である)分計だけを基準にして、これをもっと伸ばそうとか、これはやめようとか、そういうふうに考えると、うまくいかなかった場合でも、自分の頭で考えて後悔しているというより、データだけで後悔しているみたいになる。
(中略)
「マーケティングって結局、人を説得するときの材料みたいなもので、マーケティングからアイデアが生まれるというよりも、アイデアを通すためにマーケティングがあるのかな」と思うようになりました。
それ以来、市場調査のような数字よりも、皮膚感覚というか、自分の手応えのようなものを信じているところがあります。
—
企画やアイデアを軸に仕事をされている小山さんと私の仕事は異なるので、とらえ方は違いますが、「数字よりも皮膚感覚」という部分は、分析と提案を仕事としている私もそう信じているところがあります。誤解を生みそうですが、「データ」起点ではなく「考え」起点だということです。起点の「考え」の客観的な根拠として、適切な数字を扱いたいのです。もちろん、少し前のコラムでも書きましたが、経験と勘は常に棚卸ししなければなりませんし、考えの誤りは認めなければなりませんけれども。
■データに表れない要素に気づくこと
私が昔いたサイゼリヤでは、「おいしさ」は5つの要素で考えると教わりました。
・ルック(見た目)
・アロマ(口に入れる前の香り)
・テイスト(味)
・フレーバー(口に入れたときの香り)
・プライス(価格)
「おいしい」という1つの評価軸ではなく、5つの要素で評価することで、「おいしさ」を少しは科学的に評価できるというものです。私はこの話が好きで、できるだけデータで扱えるような複数の要素で見るように心掛けています。
もちろん「おいしさ」の要素はこれだけではありません。「食事の用途」や「シチュエーション」「雰囲気」「空腹」「誰と」などによって、大きくおいしさは変わってきます。しかも後から挙げた要素は、データとして表しにくかったり、往々にして計測されていない性質のものが多いです。
そういった、データに表れない要素に気づくマーケターでありたいのです。
「分析」は何も、持ち合わせのデータがすべての材料ではなく、分析モデルやツールやフレームワークを使いこなせるだけでもなく、知見やアイデアや考えもとても大事な、そして最初にそこからスタートしなければならないものだと思います。そしてそれは、常日頃からさまざまなものに興味関心を持っていなければ鍛えられない部分でもあって、つまりどんな年になっても「遊び、学べ」ということでしょうか。ほら、気がつけば「○○の秋」ですし。
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