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JR東日本が「Suica」の利用履歴をマーケティング分析目的で日立製作所に提供していた話は記憶に新しいと思います。どこまでデータを企業のマーケティング活動に活用してよいのでしょうか?

JR東日本は、各種意見があったことを受けて、下記リリースを出しました。
「Suica に関するデータの社外への提供について」

今後の取り組みでは、オプトアウトを2カ月間受け付けるとあります。期間限定でオプトアウトというのは、真のオプトアウトとは言えないと思うのですが、他のデータと紐付けたりすることも禁止しているとあるので、どうやっても個人を特定することはできない利用範囲ということです。対応としては王道になるでしょうか。

最初の問に対する自分の答は、次の通りです。下記条件で日立製作所へのデータ提供を行ってよいと思います。
・プロジェクトが決まった段階で、こういうことを行うと公表する
・常にオプトアウトを受け付ける
・提供する元データに個人を特定する情報がなくても、他のデータと紐付けることを禁じ、結果的に個人が特定される危険を避ける方法をとる

それぞれの元データに個人情報が含まれていなくても、デジタルで各種データ間の連結も容易になりました。これらのデータを連携することで結果的に個々人をかなり絞り込める情報に作り変えられる場合もあります。

このように、単にオプトアウトしているから大丈夫だという形式的な対応では危ない場合もあることを業界関係者は知っておいて欲しいと思います。ここが全数データの怖いところです。

話は変わりますがマーケティング調査の世界では、実施された調査結果のデータを基にして直接的なマーケティング行為を行わないのがルールです。
善意の第三者から集めたデータを、その第三者への売り込みに使えば、調査とマーケティングの境がなくなり、誰も調査に協力しなくなるという考え方に則っています。

調査結果は商品開発など最終的に消費者のために使いますが、調査で収集した情報を直接的に営業やマーケティングには使わないのです。

サービス提供側には有益なデータが簡単に取れ、活用できる時代になってきました。アクセス解析データやオンライン広告の閲覧/クリックデータも自動的に全数が収集され、それを利用してパーソナライズも自動的にできてしまいます。

効果的に売り込むというサービス提供サイドの目的ももちろんありますが、それが結果的にユーザーに適切な情報を提供したいという目的は同じだといってよいでしょう。マーケティング調査業界とは少し目的が違いますが、消費者のためにやっているという意味では同じです。

一部のサンプリングされたデータではなく、全数データが容易に扱える時代になっても、最終的にはユーザーに受け入れられるような「データ収集」と「データ活用」が大事です。

今回のデータ提供と同じような問題に直面した時、単に何か批判があったら止めるということではなく、何が問題でどうあるべきだったか、消費者は現在どこまで許容してくれるのか、といった検証や合意形成を積み重ねていって欲しいと思います。

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