コラムバックナンバー
メールマガジン2013年7月16日号より 石井 陽子
最近多くのところで取り上げられているビッグデータ。
ときに憧れにも似た眼差しが向けられているこのキーワードですが、本来それが示すものは単なる『ビッグなデータ』であり、広義の意味においてもそのビッグなデータを処理する技術的な処理に過ぎず、それ自体を溜めておく「だけ」では企業の収益にはつながりません。
実際のところ、超ビッグデータを持っている(と言われている)名だたる企業でも、実態はそのデータを溜めているだけで、普段はPVしか見ていない(!?)など、そのビッグなデータを収益につなげているとはとても言い難い状況なのです。
もちろん、ビッグデータやそれに対する取り組みを否定しているわけではありません。
企業にとってビッグデータは、今後のマーケティング活動において、大変重要な資産となりますし、ビッグデータに取り組むなら、まずはデータを溜めることから始めなくてはならないのは事実。
ただ、覚悟しなくてはならないのは、データを溜めると言っても、それにすら多額の投資がかかるということです。SI系企業やツールベンダーなどのプレゼンを聞いた方ならご存知かもしれませんが、その投資額は数千万〜数億単位となることだってあります。
「それだけの投資をして、リターンが本当にあるんでしょうか? 」
こうした相談事を受けた時、私は必ずこう質問します。
「あなたの会社はデータオリエンテッドな企業文化を持っていますか?」と。
『データオリエンテッドな企業文化』とは、客観的根拠(であるデータ)に基づいて企業の意思決定やコミュニケーションをしている経営スタイルのことを言います。『データドリブン』と言い換えれば、ピンと来る人も多いかもしれません。
例えば、サイト内の機能を改修したい場合、単に他社が改修したとか、上司がその機能を改修したいからといった理由ではなく、改修したい機能を使っている人が全体の何%で、その改修によってCVRが何%伸びる見込みで、いつまでに投資がペイできるのか、というようなプレゼンをしているでしょうか?
例えば、ECサイトの購買前、購買中、購買後におけるユーザーの傾向を掴むためにどんなデータをどこから収集すれば良いか、パっと思いつくでしょうか。
例えば、あなたの会社でマーケティングに使えるデータはどこに存在していて、どのような利用ができそうか、すぐに答えられるでしょうか。
これらの質問が『No』であれば、あなたの会社では、データオリエンテッドな意思決定やコミュニケーションが図られていない可能性が高いです。
繰り返しになりますが、ビッグデータはそれを使いこなす人や企業があってこそ、その資産価値を生みます。ですので、企業活動の様々なシーンにおいて、データを使うことがないような会社では、当然そのデータは埋没し、データを溜めるための多額な投資はいつまで経ってもリターンできません。
ビッグデータに挑む前にまずやってほしいことはやはり『データオリエンテッド』になること。経営者はその経営スタイルを、担当者は今のコミュニケーションスタイルをそれに変える事をしなくてはならないことを、十分に心得て取り組んで欲しいと思います。
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