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活動報告
開催日時 | 2021/09/14(火) |
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会場 | オンラインセミナー |
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2021年9月14日に、オンラインセミナー「サイト表示速度改善とSEOへの影響 基本から事例まで」を開催いたしました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
レポート執筆
株式会社Sprocket 西 倫英
2021年6月、GoogleはコアウェブバイタルによるWebサイトの評価をスタートしました。コアウェブバイタルとは、Webサイトの表示速度や触り心地などのUXを評価する新しい指標です。
セミナー「サイト表示速度改善とSEOへの影響 基本から事例まで」では、株式会社ドーモの占部 雅一氏と種村 和豊氏が、Webサイトにおける表示速度の重要性や、具体的な改善ステップの考え方について解説しました。
占部 雅一 氏(株式会社ドーモ)
占部氏は冒頭で「表示速度は、意外と知られていないキラーソリューション」と示しました。
例えば、自社のECサイトの売り上げを伸ばしたい場合、広告を出稿する、コンテンツSEOで集客するなどさまざまな施策が考えられます。同氏は、その中でもWebサイトの表示速度改善は特におすすめだと説明します。
表示速度は、Webサイトの重要なKPIにどれくらいの影響を与えるのでしょうか。AmazonやGoogleなど米国の調査結果をもとに、売り上げや離脱率の数字が示されました。
占部氏が表示速度の改善をおすすめする理由は、次の4つ。表示速度を改善することでマイナスとなることは一切なく、効果が持続することから結果的に費用対効果も高くなると説明します。
コアウェブバイタルには「LCP」「FID」「CLS」という3つの要素があります。LCPはページの表示速度、FIDはタッチやクリックなどの操作を行ったときの反応速度、CLSは読み込みによる表示のずれのことを指します。単純な表示速度だけを見ているわけではなく、触り心地や操作のしやすさが求められるわけです。
「表示スピードが遅いと、検索経由のPV数にも影響が出る」と占部氏は説明します。特に検索からの流入が多いECサイトでは、表示速度は無視できない問題になっています。
続いて、国内のメディアサイトでコアウェブバイタル対策を行った事例が紹介されました。例えば、次のような事例です。
コアウェブバイタルの改善が、メディアにとって重要な指標であるPV数に直結していることがわかります。ほかにも、GDOが運営するゴルフ場予約サイトで表示速度を1秒短縮したら、7%もの売り上げ増加につながった事例も紹介されました。
しかし、実際には表示速度の改善がなかなか進められない状況もあります。理由の1つは、表示速度の改善による効果を経営層に説明しづらいこと。これまでになかった予算だけに、説得が難しい状況もあるでしょう。もう1つは、担当があいまいなこと。マーケティング部門とIT部門のどちらが主導して行うことなのか、綱引きが起きがちです。
それでは、表示速度の改善はどのように取り組めばいいのでしょうか。その答えは、第二部に引き継がれました。
種村 和豊 氏(株式会社ドーモ)
種村氏は最初に「計測なくして、改善なし」というフレーズを掲げました。
表示速度を改善するには、まずはモニタリングが必要。あたりまえに聞こえるかもしれませんが、この考え方は表示速度改善の取り組みにおいて重要なポイントとなります。
表示速度の改善は、どこから手を付ければいいのでしょうか? 種村氏は、3つのステップを示します。最初のステップは、サイト調査。次にフロントエンド対策とバックエンド対策の2つに分かれ、フロントエンド対策の次のステップとしてチューニングがあります。
一連のステップの中で「最初の調査と設計が全体の7割を占める」と種村氏は説明します。速度改善に取り組んでいる会社の多くは「SpeedCurve」というツールを利用しています。ポイントとなるのは「時系列で速度を計測する」こと。Googleが無料で提供している「PageSpeed Insights」でも表示速度を計測できますが、あくまでその瞬間の計測にすぎないため、計測した数値にばらつきが出てしまい、あくまで参考数値としてしか使えません。本格的に表示速度改善に取り組むのであれば「時系列で継続的に速度を計測するツールが必須」と同氏は強調します。
現状の表示速度を把握したら、何秒まで短縮するかの数値目標を立てます。ここでのポイントは「速度のKPIから、ビジネス上のKPIを導いて経営者に共有する」ことです。
最初のステップで計測・調査を行い、具体的な改善目標を立てたら、次のステップはフロントエンド・バックエンドの改善です。種村氏は「多くの場合、7割はフロントエンドの問題」といいます。特に画像はWebサイトのページ容量の約63%を占めるといわれており、フロントエンドの速度改善においては「画像をどうさばくか」がポイントになります。同氏は「適切な画像サイズにすること、CDNの活用はほぼ必須」と説明します。
Webサイト遅延の主な要因は、次の5つです。
それに対する考え方と、主要な施策は次のとおり。
ページリクエスト数は、長く運営しているWebサイトだと前任者が残したタグで重複リクエストが起きている場合もあります。さまざまなサードパーティータグが埋め込まれている場合は、どのタグが表示遅延を起こしているのかを特定するところがスタートになります。
続いて種村氏は、表示速度計測における「Synthetic」と「RUM(Real User Monitoring)」という2つの方法を説明しました。
Syntheticとは「合成・定点」という意味で、データセンター内の端末など特定の場所から定期的にアクセスして測定する方法です。デバイスのスペックや回線速度による差が出づらい状況で、Webサイト側のどこにボトルネックがあるかを特定しやすいというメリットがあります。
RUMとは、その名のとおりユーザーのブラウザー上で表示速度を測定する方法です。さまざまなデバイスや回線速度で、実際の顧客体験にどのような影響があるかを調査できます。
この2つはどちらが優れているというものではなく、お互いが補完し合うものです。種村氏は「個人的には、Syntheticで鳥瞰して見た後に、RUMを見ていくのがおすすめ」と説明します。
表示速度の改善は、瞬間的な飛び道具ではありません。Webサイトの土台が安定すれば、その効果は持続します。「表示速度の改善は専門性が要求される分野ではあるものの、重要なマーケティング施策であると認識し、マーケターが戦略的に対応するべき」と種村氏は指摘します。
マーケティング施策であるからには、客観的な計測環境を構築して効果検証できる仕組みを作ることが必要です。そのためには、表示速度が重要な指標であるという組織の意識作りも重要になります。
Webサイトの表示速度はIT・システム部門任せにするのではなく、コアウェブバイタルという視点から、マーケターが主導して改善に取り組むことが求められているのです。
種村氏:まずはどのタグが表示遅延を起こしているのかをチェックする。遅延を起こしているなら、そのタグを外すか、遅延を起こさないように調整するかという順番になる。実際は「このタグは遅い」というものがあって、最終的にはそれを許容するのか、外すかというビジネス上の判断になる。
種村氏:サーバーサイドGTMについては勉強できていないが、一般的にサーバーサイドはクライアントサイドと比べて環境に左右されづらく、安定して提供されるのはあると思う。ただ、サーバーサイドだと運用管理が大変なイメージもある。
占部氏:表示速度というよりも、SPAでアプリのように使えるなら、カートに入れるまでのクリック数が減るなどのメリットはあると思う。
種村氏:トレンドの話をすると、以前はGoogleがPWAを推していたが、今はPWAでなくてもちゃんとコアウェブバイタルが高くて速いサイトであれば問題ないとGoogle Developersに書いてある。だから、SPAやPWAかどうかにはこだわらないというのが今のGoogleのスタンスなのかなと個人的には思っている。
種村氏:そう。広告が呼び出されると、広告側のサーバーからオブジェクトが返ってくる。そのレスポンスが遅いと、結果的にWebサイトの表示速度が遅くなる。
種村氏:個人的な意見も入るが、費用対効果が出せないからやらないというのは、今起きている機会損失(ロス)を無視するということ。弊社では機会損失シミュレーターというものがあって、それで損失を確認することもできる。あとは、表示が遅いときの動画を撮って、経営層に共有するのも効果がある。いきなり改善が難しくても、まずは計測からミニマムにスタートするのもあり。計測の結果が遅かったら、そのデータをもとにして改善するというステップがいいと思う。
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