活動報告

開催日時 2021/06/16(水)
会場 オンラインセミナー

2021年6月16日に、オンラインセミナー「【事例】オンラインで完結しないビジネスの広告評価と最適化」を開催いたしました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

レポート執筆
二村 勇輔

第一部:デジタル広告の正しい価値評価を目指してバイク王が行ったこと

左:藤田 佳浩氏(アユダンテ) 右:大石 和生氏(バイク王&カンパニー)

第一部は、株式会社バイク王&カンパニーの大石 和生氏が中心の講演です。

講演は講師お二方の自己紹介から始まり、続いてバイク王&カンパニーのビジネスの根幹であるバイク買取までの一連の流れを解説します。

バイク買取の特徴は、オンラインで買取査定申し込み(オンラインのCV)後にオフラインのフェーズに移り、査定予約・買取成約・買い取ったバイクの売却までと、粗利確定するまでのオフラインの期間が非常に長いことです。
そのため、オンライン申し込みの時点では、成約(粗利確定)等は不明であり、真のビジネス価値があるCVはオフラインに集中していることが課題になっていました。
また粗利金額に関しても、車種や排気量によって大きく異なるため、オンライン申し込み時点での金額が不明である点も悩んでいたとのことです。

上記のような、買取査定申し込み時に価値(粗利金額)を算出できないかといった課題を解決するために、機械学習を使って価値を予測する取り組みをはじめました。過去データを活用して、申し込み時に価値を予測する取り組みです。
成約が確定している情報とお申し込みデータから、機械学習により、予測価値を算出しました。このデータをGoogle広告に反映することで、広告の重み付けができるようになりました。申し込み時には、排気量や車種などが大事な情報になりますが、それらの項目を「すごく重要なもの」「やや重要なもの」など、入力時に重み付けすることで、より的確な運用ができるようになりました。

今回のような目新しい取り組みが実現できたのは社風の影響が大きく、特に広告サイドに関しては、テレビCMをはじめ、新しいものにチャレンジできる環境とも大石氏は補足します。

ここで藤田氏より具体的な対応が説明されます。
過去の成約データを一旦BigQueryに流し込み、BigQueryMLを使って分析し、予測モデルを構築します。とはいえ、データさえあれば良いわけではなく、課題や目的に対して定性的にデータの有効性を検討した上で設計します。この予測モデルをGTMのカスタムJSで組み込みますが、この時には、入力値に対して定義した重みをかけ合わせて価値算出するように実装します。その結果をGoogle広告のCVに反映させ、予測価値(粗利)を利用したtROAS運用が実現できるようになりました。
CPA運用とtROAS運用を比較した場合、tROAS運用のほうが適切なお客様にリーチできて効果的だという結果となりました。

今後の運用方針としては、仕組みとしてGoogle広告だけでなく他でも活かすことができるため、Search広告だけでなく、Display広告やYahoo!広告への出稿などに面を広げ、全体的な広告の最適化をめざしていくと語りました。
また、今回の知見を活かしたコールセンター最適化についても触れました。

第一部のまとめは、以下2点です。

  1. 実際のビジネスの価値=オフラインCV
  2. ⇒機械学習を用いた予測モデルによる価値予測

  3. CPAベースの運用からROASベースの運用へ
  4. ⇒同じCVでも価値が違う。質への転換

上記により、お客様に合わせた適切な価値提供が可能になったとまとめ、第一部のQ&Aヘと移りました。

Q. 排気量、車種、時間帯で最終的にモデルを作成されたかと思いますが、他に検討やテストしたデータ項目はありますか?
A. 入力項目が多くないため、上記以外のデータはほとんどなかった。
しかし、何を見て申し込みしたか?という項目は有効なデータになった。認知媒体を計測するためのアンケート的な質問にはなるが、これに回答するかしないかでその後のCV率が大きく違った。本来の趣旨とは異なるアンケートの回答がその先のCVに影響するのは、大きな発見だった。

Q. 実績の粗利が確定されるまで一定のリードタイムがあるかと思いますが、機械学習による予測値はどれくらいの頻度で更新されていますか?
A. モデルを作るデータとしては、直近1年の全データを利用した。
トレンドによって相場は変わるが、大きいところでは変化しないことと、アンケートに答えてもらったのか? メーカーはどこか? のような変動が少ない部分での傾向が大きく出ていたので、それにより頻繁に更新すると言うより、直近1年の傾向を元に運用している。
コロナの影響により変わる可能性もあるので、その際に改めて分析し直しても良いと考えている。

Q. データの重み付けは、何を基準にされていますか?
A. メーカー、排気量、アンケート結果の3項目が大きかった。
他には申し込み時間も重要になった。時間帯によってユーザーのモチベーションが異なるため、4段階に分類している。これらは分析している中で見つけた。

第二部:粗利データを反映したGoogle広告の最適化・評価

第二部は、第一部の内容に続く形で、アユダンテ株式会社の藤田 佳浩氏中心の講演です。

はじめに、広告施策の評価についてから話がスタートします。
予測モデルを使った広告施策の評価は、オフライン上にある粗利データなどを人力で紐づけて行っていました。紐付け作業は毎日午前中に対応していて、課題は以下の2点です。

  1. オフラインデータをGAで計測することはできないか?
  2. 広告評価だけでなく、SNSやオーガニック流入の評価も行いたい。

上記の解決策として、
・オンラインデータはGTM経由でGAに送信
・オフラインデータはメジャメントプロトコルを使ってGAに送信
にて解決したと話します。
メジャメントプロトコルにClient ID をセットして送信することで、オンラインとオフラインのClient ID を突合させます。単に数字を見るだけであればGAのデータインポート機能でよかったが、購入につながったデータ(=CV)として活用したかったため、メジャメントプロトコルを使用しました。

データの活用については、GAのCVデータを入札戦略に活用します。査定予約や粗利金額を反映することで、CPA運用ではなく、ROASベースでの運用に変わりました。
CVとして計測することで、Google広告側にCVデータを送信することが可能になりましたが、これを実現するにはデータインポートではなく、メジャメントプロトコルが必要でした。

具体的な運用内容に関して、下記の流れになります。

  1. CSVデータ生成
  2. CSVデータ送信(バッチ処理)
  3. データ整形
  4. Cloud Storage へアップロード
  5. データ送信処理(GA送信用(メジャメントプロトコル)のデータ生成/送信)
  6. データ送信(想定売上金額/純査定予約 )
  7. データ計測・CV設定(想定売上金額/純査定予約)
  8. 自動入札設定

上記の仕組みには、要件定義 ⇒ 計測設計・実装 ⇒ 計測テスト ⇒ 運用 などのフェーズがありますが、運用までの流れは通常のサイトの計測設計と大きく変わるものではありません。ポイントとして一番重要なのは、要件定義です。

共有いただいたオフラインデータに何が入っているのか、広告評価するためにどんな情報が必要なのか。ビジネスフローにおいて重要な指標を大石氏から詳細かつ丁寧に説明を受けたことで、自分自身の中でしっかり把握し、定めることができたと藤田氏は言います。
大石氏は、事業自体がかなり特殊なビジネスモデルになっていて、バイクというニッチな商品を扱っているからこそ、藤田氏にビジネスサイドのことを理解いただけたことが今回の成功の秘訣だった、とも補足します。

今後の展望としては、やはり、GA4への取り組みです。
現時点でGA4でオンラインCVの計測はできています。GA(UA)でやっていたことを同じようにGA4でやっていけたら良いと考えています。
また、単にデータを送るだけではなく、GA4ならではのオーディエンストリガー・予測オーディエンスによりGoogle広告の幅を広げていきたい。予測オーディエンスが使えるようになったタイミングでGoogle広告のキャンペーンを行うなどを検討できたらとも考えています。

第一部と第二部をまとめた総論として、

  • これからの広告施策などは量から質に変わっていく
  • オンラインだけでは測りきれないところに質があることは昔から常である
  • オフラインにある上質なデータをいかにオンラインと繋ぐかというところが重要になっていく

これらを実施することで、より価値の高い顧客体験の提供と、正当な評価につながっていくとまとめます。

以下、第二部の質疑応答になります。

Q. オーディエンストリガーはどのような機能なのでしょうか?
A. オーディエンス単位でイベントが作れる機能。
セグメントに合致した人をトリガーにしてCVイベントを立て、オーディエンス条件にマッチしたら、CVとして計測する。任意のセグメント条件を作って、合致したCVを重みのあるCVとしてカウントする。このCVデータを使ってGoogle広告に反映することができる。
今回のケースであれば、排気量などによって、オーディエンス条件を作成し、何回CVが発生したのか、それに合わせて広告の最適化を行うことができる。

Q. メジャメントプロトコルでの送信データとオンライン計測データの紐づけはClient ID のみでしょうか?参照元情報とCVの紐づけをどのように行っているのでしょうか?
A. キーはClient ID 。GA側は自分でClient ID を発行するが、基幹システムへも取り込んでいるので、Client ID をベースに紐付けて、最終的にオフラインでどうなったのかを計測していく。
参照元情報とCVの紐付けはClient ID が一致していれば紐づくが、メジャメントプロトコルで送っているデータは、参照元を入れていない。そのため、GAでは direct/none で計測されると一つ前の流入が評価されるため、広告が紐づくかたちになる。ディメンションの直接セッションで確認すると、メジャメントプロトコルで送信したものはすべてYesになる。

Q. Google広告のオフラインCVインポートも機能としてあると思いますが、Client ID がないため、キーワードへの紐づけが難しいからメジャメントプロトコルを活用しているイメージでしょうか?
A. Google広告のオフラインCVインポートを使う場合もあるが、メジャメントプロトコルを活用したのは、GA上での評価がポイントになっている。
SEOを考えたりすると検索エンジンはどうだったのかなどの検討事項があることと、最終は広告で申し込んだが、その後再訪問で検索で。などのアトリビューションの話が出てくるため、GAでの評価の前提になっている。

その他多数の質問が寄せられ、バイク王さまとアユダンテさまの取り組みへの関心が高かったことが窺えます。
オンラインとオフラインを繋ぐ広告最適化講演は、大盛況で幕を閉じました。

出演講師

大石 和生

株式会社バイク王&カンパニー
コンタクトセンター デジタルマーケティンググループ マネージャー

詳細プロフィールを見る

藤田 佳浩

アユダンテ株式会社
デジタルソリューション事業部 シニアデータソリューションコンサルタント

詳細プロフィールを見る

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