コラムバックナンバー
運営堂 森野 誠之
発信元:メールマガジン2025年9月24日号より
小さな会社の支援をしていると、やることはわかっていても進まないことが本当に多いです。理由はほぼこの3つ。
簡単に言えば「やりたくない理由を言い換えている」だけなんですが、ここを突破しないと何も始まりません。SEOがどうとか、GA4がどうとか、SNSがどうとか、いかにもウェブマーケティングっぽい話はずっと先の段階のことです。
これをどうやって解決していくかを説明します。
例えば採用に困っている会社に「SNSをやりましょう!」と提案しても、返ってくるのは「やったことがなくてわからない」「忙しい」で終わりです。しかも相手はこんなふうに考えています。
だったら「やらなくていいじゃないか」と思ってはいけません。採用で困っているという問題を解決するためにSNSを提案しているのですから、投稿して成果が出るところまで伴走する必要があります。
注意点として、東京のそこそこの規模の会社のように「上からの指示で予算も期日も決まっている」ということは、小さな会社ではほとんどありません。やらなくても日常は過ぎていきます。だからこそ工夫が必要になります。
DMAIC(ディーマイク)って何ぞや?という人のために、私の一方的な師匠である衣袋さんの記事を紹介します。
DMAICはざっくり言ってしまえば、データに基づくプロセス改善手法のことで、Define(定義)、Measure(計測)、Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)という5つのサイクルで改善活動を行なおうという考え方のことです。
【メルマガコラム】データに右往左往する豊洲移転問題に学ぶべきは「DMAIC」の考え方 – コラムバックナンバー – アナリティクス アソシエーション
難しそうに聞こえますが、要は「きちんと順番を決めて進める」だけ。これが小さな会社の「進まない病」に効くんです。DMAICの流れに当てはめるとこうなります。
「投稿ネタが思いつかない」「炎上しない投稿がわからない」「そもそも操作がわからない」「社用スマホがなくて個人だと嫌だ」など、その人たちが困っていることを細かくヒアリングします。ほんの些細な理由で詰まっていることが多いので、そこを定義していきましょう。
「SNSやりたくない」の裏側にある本音を探るには、こんな質問が効果的です。
技術面:「アカウントの作り方がわからない」「写真の撮り方が…」
心理面:「恥ずかしい」「批判されたら…」「反応がなかったら…」
物理面:「時間がない」「スマホが古い」「社内の許可が…」
これを整理すると、本当の問題が見えてきます。問うに落ちず語るに落ちる。聞きだすのではなくて、話してもらえば自然と出てきます。
次に「現状」を数字や事実で把握します。感覚や思い込みではなく、客観的なデータを集めることが重要です。
「忙しい」という言葉の裏にある実際のスケジュールを記録してもらいます。
1週間の業務記録から見えてきたこと(建設会社を想定)
記録を取ると「意外と隙間時間がある」ことに本人も気づきます。
すでに会社にある「SNSに使えそうな素材」を洗い出します。
日常業務で生まれているコンテンツ
SNS以外も含めて、会社がどこで情報発信しているかを確認します。
地域の同業他社5社のSNSを1ヶ月分調査します。
A社:週3回投稿、平均いいね数25、主に現場写真と安全朝礼の様子
B社:月2回投稿、平均いいね数45、社員紹介と施工事例が中心
C社:毎日投稿、平均いいね数10、「おはようございます」の挨拶投稿
D社:週1回投稿、平均いいね数30、施工のビフォーアフター写真
E社:月1回投稿、平均いいね数15、会社イベントの報告
こうして計測することで、現状が明らかになって感覚の議論から脱出することができます。
集めたデータから、問題の本質と解決への道筋を見つけ出します。
「時間がない」の分析結果
できない理由の分析結果
分析結果から仮説を立てるとこんな内容になります。
仮説1:ハードルを下げれば継続できる?
仮説2:見える化で不安が消える?
仮説3:仕組み化で属人化を防ぐ?
あくまで仮説なので、この段階で担当者さんなどと話し合うことが大切です。「こんな仮説だからこれをやれ!」と言われても困るので、「調べてみたらこんな仮説があるのですがどう思います?」ぐらいから入りましょう。
データを扱う人ってそれが事実だと思って突きつけがちですが、事実を明らかにすることが目的ではなくて、他の目的があるのでそれを達成することを考えましょう。
原因が見えたら小さく改善。ここでのポイントは「いきなり大きなことをしない」です。
小さな会社の経営者は「本当に効果あるの?」と疑っています。だから早めに小さな成功を見せることが大切です。
クライアントや社員の皆さんに直接聞いてみたりするなど、自分から反応を確認しに行くとうまくいきやすいです。待っててもユーザーの声は出てこないですから。
最初は担当者1人でも、徐々に周りを巻き込んでいきます。
あとは担当者さんを褒める。とにかく褒める。ちょっとしたことでも褒める。
今までできてなかったことができるようになったのだから当然ですよね。世の中のほとんどのことは、気分さえよければ進んでしまうのです。
改善が定着するまでが勝負です。多くの小さな会社が「最初の1ヶ月は頑張ったけど…」となってしまうのは、この管理フェーズを軽視するからです。
これを担当者さんとの定期ミーティングで確認したり、SNSの投稿を見てチャットなどで感想を伝えていくことがポイントです。誰かが見てくれているから続くことって多いです。
小さな会社の「わからない・忙しい・お金がない」は、実は「変化への不安」の表れです。穏やかな変化でちょっとした成果を積み重ねることで、変化への不安がなくなっていきます。最も大切なのは「完璧を求めない」こと。60点でいいから始めて、続けながら改善する。小さな会社にはこのスピード感が一番合っています。
そして、DMAICを使うとこんな流れでいろんなことが解決できます。
DMAICってデータ分析だけに使うと思っていた人は、日常の業務に置き換えてみるといろんなことが解決すると思いますので、一度試してみて下さいね。
お膝元である愛知県を中心に地方のWEB運用を熟知し、主に中小企業を中心としてGoogleアナリティクスを利用したサイトの分析、改善提案やリスティング広告を用いた集客改善など、サイト運営の手伝いを行なっている。最新情報を押さえながら地方かつ中小企業向けのノウハウをわかりやすく説明できる数少ない人物。毎日発行されるWebマーケティング関連情報をまとめたメルマガ(毎日堂)は業界内でも愛読者の多い人気メルマガとなっている。
2025/10/16(木)
オンラインセミナー「Cookieレス時代に取り組むべき攻めと守りの計測方法」|2025/10/16(木)
近年、AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)や各国のプライバシー規制強化により、従来のCook …
2025/09/30(火)
オンラインセミナー「マーケティング戦略づくりの要諦 ~「デジタルの枠」を超えて」|2025/9/30(火)
プライバシー保護と計測の難しさ、生成AIの台頭、検索やSEOの変化──デジタルマーケティングを取り巻く環境は激変しています。こうした変化の中 …
2025/09/10(水)
オンラインセミナー「手間ゼロの広告レポーティングを「Looker Studio」×「Databeat」で実現する方法」|2025/9/10(水)
ツール研究会の2回目は、Databeatがテーマです。 広告データの収集から蓄積・レポート作成までを自動化できる「Databeat」の活用方 …
【コラム】わからない・忙しい・お金がないをDMAICで解決する
運営堂 森野 誠之イントロ 小さな会社の支援をしていると、やることはわかっていても進まないことが本当に多いです。理由はほぼこの3つ。 わからない 忙しい お金 …
【コラム】参照元Googleめ、お主は私の知っているGoogleではないのだな……
アナリティクスアソシエーション 大内 範行少し前、空気清浄機を買うのに、生成AIに頼ってみました。 おすすめ候補をリストアップしてもらい、機能やスペックを比較し、こだわっているポイン …
【コラム】生成AI時代、独自性・原体験をどうコンテンツに組み込んでいくのか
株式会社A-can 白砂 ゆき子生成AIが業務に浸透することで、コンテンツ制作におけるリソース配分は大きく変わりました。以前は原稿執筆の作業時間が最も長く、次に構成、そして …