コラムバックナンバー
メールマガジン2016年8月31日号より 衣袋 宏美
今回のコラムのテーマは「質の評価」です。きっかけは、この記事です。
「アーティストにKPIを求めるなんてバカげてる」ライゾマティクス 齋藤精一のクリエイティブ考この記事は興味があれば読んで頂きたいのですが、記事タイトルからもお分かりの通り、単純に「アーティストの作品を評価する必要はない」といったニュアンスの主張だけが一人歩きする危うさがあると感じました。
主観的評価にならざるを得ないアート作品の評価は単純ではないと思うのですが、アート作品を展示するイベントでも、そのイベントが成功だったのか失敗だったのかを評価する必要はあると思います。目的のない道楽なら別ですが、イベントの目的に対して何らかの評価というフィードバックが必要だということです。
まず「量」と「質」について整理しておきます。「量」と「質」はいろんな対立軸の中で語られることが多いですが、2項対立軸ではありません。交差したX軸とY軸のようなものだと思います。
そして例えばアート作品のイベントの「量より質」が大事みたいな文脈では、どれだけの人に見てもらえたかが「量」に、見た人にどれだけ感動を与えられたか(もちろんこれを検証できる定義が必要ですが)が「質」の評価軸の例になります。評価の方針が「量より質」なら、多くの人は来なかったけどアンケートの結果から殆どの人が涙して帰ったことがわかったので、今回のイベントは大成功と評価するといった具合です。
ではウェブサイトのアクセス解析で、「量より質」という文脈において、「量」と「質」は何を指すのでしょう。「量が多いことがよいことだ」というの評価軸の代表は、ユーザー数や訪問回数やページビュー数といった指標になるでしょう。一方ユーザーの男女比などの構成割合やウェブサイトの利用され方の指標である滞在時間や直帰率などが「質」の評価の一端を担っているデータになるでしょう。
ここで混乱しやすいのは、質的評価軸といっておきながら、コンバージョン率のような数字(量)じゃないかというところかもしれません。「感動した」みたいな直接量で表現しにくい質的評価軸も、実際は感動した人の割合や5段階評価での平均点、みたいな数字に変換して使いやすくすることを我々は普通にやっています。質的評価を数字で行うことは矛盾しないと考えて下さい。
この「量」と「質」という言葉を前提として、何を言いたかったかというと、我々が向き合うサイトの最終評価は「量」×「質」だと考えるとわかりやすくなるのではないかという提案です。eコマースサイトの因数分解でよく例に出されるのは「売上=訪問者数×コンバージョン率」です。訪問者数は「量」にあたる数値で、訪問者の質の評価軸はコンバージョン率となるわけです。つまり購入意識の高いユーザーの含有量の高さを示す質的評価軸がコンバージョン率です。
しかしそれ以外のサイトでは、「質」の判定に明確な評価指標を選択しにくいのが常です。「質の評価」が「量の評価」より難しく感じるのはサイト(あるいはページ)の目的によって、この「質の評価」軸がまちまちだからです。どのサイトにも共通な正解があるわけではありません。
閲覧ユーザーの構成比などの数値、「滞在時間」や「直帰率」その他いろいろな指標がありますが、どのような数値を皆さんはサイト来訪者の「質の評価」軸として採用されていますか? それはサイトに関わっている方々と共有されていますか? そこが大事なのかなというのがこのコラムで言いたかった結論です。
付け加えて言えば、よくある「ページビューは死んだ」という議論がナンセンスなのはもうお分かりですよね。総合評価が「量」×「質」と考えれば「量」はどうでもよいはずがないからです。サイトの目的に応じて多様な軸で評価する必要があるのは、昔からもこれからも変わらない基本原則だと思います。
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