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今回は統計を学ぶにあたって、目指すべき方向性を簡単に考察してみたいと思います。
統計と一言で言っても、取り組む海は非常に広くて深いので、「勉強」にどこまでの労力をかけるべきか見極めが難しいでしょう。そこで勉強にあたって自分の「出口戦略」を持って「入門」をはじめるのがよいと考えました。「出口」として、以下の3つがあると考えています。
1. モデリングや製品作りをする統計スキル(ファーストクラス)
2. 製品と人を結ぶ統計スキル(ビジネスクラス)
3. 人と人を結ぶ統計スキル(エコノミークラス)

今、一言で「統計スキル」と銘打った記事や書籍を見た時、この3つのレベルが、ごっちゃになっている印象を受けます。データサイエンティストとして登場する方も、データモデリングに取り組む方から、企業の現場で次の打ち手を説得する人まで、あまり区別なく「統計スキルのある人」として扱われています。

一つ目の「モデリングや製品作りをする統計スキル」は、大学院などで数学や統計学をしっかり学んだ博士クラスの人で、レコメンデーションツール、アトリビューションツールといった製品を支える統計モデルを構築できるような人です。
具体的な人としてはGoogleのAdWordsの品質スコアの生みの親の一人ハル・ヴァリアンのようなイメージです。アマゾンのレコメンデーションの協調フィルタリングのモデルを構築するような人でしょうか。

二つ目の「製品と人を結ぶ統計スキル」は、上記の製品と使い手である実際の企業の橋渡しをする人です。統計モデルや機械学習を駆使した製品も、データを放り込めば結果が出る、というものではありません。その前段階のデータ分類などの準備や、実施後の細かなチューニングを必要とします。
多変量解析などの統計スキルを身につけた人で、a2iでコラムを書いていただいているARBERTの菅さんなどがその具体的なイメージになります。

三つ目の「人と人を結ぶ統計スキル」は、どちらかと言えば、最初の打ち手を決める際に、統計手法を使って、経営陣や現場を動かす人です。改善の打ち手を提案して、人を動かす場合、実は統計手法は両刃の剣になります。
これまで何人かのデータサイエンティスト的な役割の方々と話してきましたが、私の印象では使う統計が高度であることが、必ずしもビジネス改善には役立ちません。
説明を受ける相手の人やチームが、理解できない、そのために動いてくれない、というブラックボックス化の状況が生まれがちです。

この三つ目の「人と人を結ぶ」統計スキルとしては、標準偏差、相関分析、単回帰分析までのスキルを「まず」身につけることがスタートでしょう。多くの事例でこれらのスキルで十分ですし、より大事なことは実際に使ってみることです。
逆に現場で使ってみるためには、基本的な統計スキルの方が、使い勝手がよいですし、相手を説得し易いのです。
実践を重ねることで、さらに上の統計スキルを身に着けていくのは、むしろ難しくないでしょう。

実はこの層が、この2・3年で最も市場のニーズが高く、多くの方々はこの層を目指して、まず統計の勉強に取り組むべきだと考えています。
今回は「人と人を結ぶ」統計スキルを身につけるための最適な入門書を紹介してコラムを終えたいと思います。
実際にビジネス改善を進める担当者と上司の対話式で、基本的な統計スキルを解説していて、単なる統計の勉強というだけでなく、どう使いこなすか、その基本を押さえている書籍としておすすめです。

「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本
柏木 吉基 (著)

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