コラムバックナンバー
メールマガジン2014年8月6日号より 真摯 いちしま泰樹
ある領域において、自社にもし適切な方向性を示せる人がいなければ、適切なコンサルタントの意見に耳を傾けることになると思います。複数の意見を求めることもあるでしょう。異なる視点での意見は貴重な判断材料です。ただし、「あのコンサルタントが言っていたから」という理由だけで、何も考えずに物事を決めてはいけません。できるだけ自分たちで受け止めて、目的やゴールに向かっているかを熟考した上で判断しなければ、そのうち思考停止の「ひな鳥体質」になり、多くのことが他人任せになってしまいます。自社のビジネスを動かしているのは自社です。自社にノウハウを蓄積するには、すべてはむずかしくとも少しずつ自社で「咀嚼」して、その構造理解が必要です。
少しフィクションを話します。昔、クライアント様にある事象について意見を求められました。調査分析を経て所感を伝えたのですが、後日その領域の施策を手掛けている代理店様とのミーティングに同席した際、伝えたままの状態で「こう変更してほしい」と指示している場面に出くわします。私は「いや、確かにそうなんだけれども」と思いつつ、その後に個別に確認をしました。「私の考えを全面的に受け入れてくれるのはありがたいのですが、それらを御社は熟考されましたか?」
右から左に流すだけでは、クライアント様には何も残らないと思うのです。
もう一つ、個人的な話をします。この数か月間、体調が思わしくなく、いくつかの医者に診てもらいました。最初はかかりつけの内科です。風邪のような症状だと診断しつつ、「私が専門的に診るのは首から下なので、鼻や喉も具合が悪いのでしたら、耳鼻科にも診てもらうと良いでしょう。首から上は耳鼻科ですから」と、異なる視点でも診てもらうことを勧めます。「出す薬は同じようなものかもしれないけれど」。
耳鼻科の診察も受け、風邪の処方箋をもらったのですが、残念ながらそれから2~3週間、症状はそれほど良くなりませんでした。内科と耳鼻科の先生の診断が間違っていたわけではないと思いますが、診断も少しあいまいな内容だったために、私も半信半疑で、薬を飲んでいるだけだったのだろうと思います。
その後、体調は緩やかに回復しつつあったのですが、「東洋医学にも診てもらうか」と鍼灸院に行きました。2回の治療を経て、体調が劇的に良くなったわけではないものの、私がいま意見を受け入れているのは、内科でも耳鼻科でもなく、鍼の先生のものです。自分の症状に対する先生の診断に腑に落ちる部分があり、「少なからず自分の体にそういうことが起きているのだろう」と、自覚していなかった部分を理解し、腹をくくったわけです。
自覚していなかった部分を把握したおかげで、「これからこう気をつけよう」となります。単に薬を飲むだけでなく、自分事になったのだろうと思います。
コンサルタントは医者のようなものというベタな話であったりもしますが、その意見を聞いた上で、自分たちも腹をくくらなければなりません。良い結果が出ればもちろんいいのですが(コンサルタントとしては結果を出したいところですが)、仮に結果が芳しくなくても、「なぜ」だったり「この部分は良かった」など、結果に対して自分たちでもフィードバックができます。
コンサルタントの言葉をうのみにせず、いったん咀嚼してから、判断や決定をする。私はコンサルタントの一人ですが、クライアント様にはそういてほしいと思っています。
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