コラムバックナンバー
メールマガジン2014年4月30日号より 石井 陽子
先週ですが、面白い記事がポストされていましたので紹介したいと思います。
『コンピュータが将棋を完全解明したら? 羽生善治三冠の回答』
これは、将棋界のみならず様々なところで一時話題となった、プロ棋士vsコンピュータソフトの電王戦の話にまつわる羽生善治三冠のコメントに関する記事です。
仮にこの記事にでてくる2つの登場人物(?)を、
・プロ棋士:アナリストやマーケッター
・コンピューター(マシン):データ処理ソフトやマーケティングオートメーションのツール
こんな風に置き換えて考えてみると、ここで起きていることは、データアナリティクス/データドリブンマーケティングの領域で起こっていることと非常に近いものを感じます。
将棋というのは、相手の打ち手に対して、対抗パターンというのがありますから、棋士の強さはその「パターン」をどれだけ知っているか、何手先まで読めるかというところ、つまり「仮説立案力」で左右されます。その仮説立案力は、多くの経験を積み重ねることで増えていきます。もちろん、センスもありますね。
一方の将棋マシンは、過去繰り広げられたたくさんの勝負データベースからベストな手を瞬時にはじき出せる、いわばおぞましいほどの経験値と記憶力を持った棋士だということになります。
加えて人間とは違い、疲労や精神的なプレッシャーなども関係ありませんから、その2者が対抗したら到底勝てそうにないように思えます。
この状態をデータアナリティクスの領域に置き換えてみます。私がデータアナリティクスの仕事に携わるようなったころと比べると、今はデータアナリティクスだけでなく、施策実施の領域においてもかなり多くの部分が機械で処理できるようになりました。分析/マーケティングで用いるデータが増えれば増えるほど、むしろマシンを導入した方が人間の手で処理するよりもよっぽど精緻な結果になるという現状が、とても良く似ているように思います。
この先データを使ったマーケティングの領域に、人間は必要なのだろうかと、憂う気持ちにもなります。
しかし、羽生さんはこの状態を楽しんでいます。その理由は羽生さんに対して、将棋がコンピュータによって完全解明されてしまったら、どうするんですか?という問いを投げかけたときの羽生さんの答えに隠されています。
「そのときは桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えればいいんです」
マシンが処理(や最適化)できるのは、あくまで過去のデータを元にしているものに過ぎません。ですから仮に世の中のルールが変わったら、それを処理するルール(プログラム)は作りなおしやチューニングが必要になります。
世の中が進歩すればそれだけ新しいルールが生まれるわけで、それを作るのはやはり人間。つまりそこに人間の存在意義があるとも言えます。
ですから、今後私たち人間(マーケッターやアナリスト)がやらなくてはならないのは、過去のデータを処理することではなく、「チャレンジ」することなのではないかと感じます。
こんな風に考えてみたら面白いかもしれない、こんな風にすればユーザーが喜ぶかもしれないということを常に考え、試してみること。試せる環境を企業内で作っていくこと。それはKKD(勘と経験と度胸)でいうと、「勘」や「度胸」に似たものかもしれません。
羽生さんのこの言葉は、マシンと比較されがちな私たちの仕事に、勇気やワクワク感をもらえた記事でした。
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