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仮説をどうやって立てるのか? そう聞かれる機会があったので、今回はその点考えたいと思います。
実は私自身そう聞かれるまで「仮説」というテーマを、これまできちんと考えたことはありませんでした。ですので、体系的な答えはありません。自分のやり方を振り返りながら、よい仮説を得るためのプロセスについて書き出してみたいと思います。ある程度経験を重ねた中での取り組みなので、参考になればと思います。

私の場合、分析から改善案の抽出まで、仮説はステップを踏みながら精度を高めていきます。仮説はいわば「多分こうだろう」「こうすればよいのでは」という検証をするための前提シナリオだと思います。最初は曖昧なところからはじめ、徐々にその根拠や輪郭を明確にして進んでいきます。大きく分けると、私の場合、3つの段階を進みます。

1つ目は、分析の「当たりをつける」段階です。データ分析を闇雲に進めても効率が悪いので、仮説を持ちながら分析を進めていきます。
例えばトップページの分析の例だと、データ分析を進める前に、ページを眺めながら、「作り手はどうユーザーに歩いてほしいと思っているのか?」をメモにして書き出していきます。サイトの「改善」は、作り手とユーザーの間にあるギャップを埋める作業です。まず作り手の思いをデータを見る前に出してみて、分析の段階で、ユーザーの歩き方がそれに合致しているか、食い違っていないかを見ていきます。
3つぐらいのセグメントごとに、思った行動と同じ部分、違う部分を書き出していきます。例えば「新規ユーザーが想像以上にサイト内検索を使っている」というのもギャップの一つです。こうしているはずだ、という前提があるので「思ったのと違うぞ」というギャップが見つかります。

2つ目は、1つ目で「当たり」をつけた点を、文章にして書き出す段階です。上記で当たりをつけた思いつきを、よりきちんとした文章にしていきます。セグメントの定義、各セグメントのユーザー行動シナリオ、実際のデータから得た課題とうまく機能している点を書き出していきます。
この段階では、データ分析を様々な角度から行うと同時に、ヒアリングを行います。できればユーザーテストを並行して行っていきます。
書籍「イシューからはじめよ」の中で、著者の安宅和人氏が「仮説は文章にして書き出せ」と言っていますが、これは私も深く同意します。
鼻歌でいい曲だと思っても、楽譜やコード譜にして演奏してみると、ダメダメな曲だったということはよく起こります。文章に整理すれば本質が明確になると同時に、自分の思いつきの有効性を疑うことができます。

3つ目のステップでは、具体的に改善案を出していきます。ここからの作業は、チームでの作業になっていきます。課題と改善の方向性を全員が納得した上で、改善案を出していきます。この段階で注意するのは、悪い点だけに目を向けないで、うまくいっている点にも注目する点です。
Voyage Groupの榎本さんがブログ上で「ブライトスポットに着目する仮説立案」ということを書いていて、なるほどな、と思いましたが、よい点、うまく行っている点にフォーカスを当てて、それをもっと極端にしてみる、繰り返すなど、強調を進めていく、ことで数値が上がる点は多くあると思います。

仮説を立てる段階でしんどいのは、思いつきを捨てる段階です。自分がこうでないだろうか、と思ったものを、一旦引いて別の視点から見て、疑い、捨てて、別の案を絞り出すプロセスです。一度思いついた曲を捨てて、別の曲を生み出そうとする感じで、ちょっと辛いですね。
ただ私の場合、一度ですんなりと改善案まで結びつくことはほとんどないので、2つ目のステップで何度か足踏みや行き来をします。一方で、自分の思いつきを捨てることで、ぐっと精度が上がっていくので、今は捨てる段階も楽しんでいます。「これかな」「いや違うぞ」と自分の中で別の人間と対話しながら喧嘩もしています。分析をしながら声を出してひとり言を言うこともあるので、ちょっと周囲の人は、気持ち悪いと思っているかもしれません。

「イシューからはじめよ」安宅和人著
「グロースハックのための仮説の立て方」

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