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データアナリティクスをする上での心得や、コツなどについて過去にもa2iのいくつかのコラムで書かれてきましたが、行き着くところデータサイエンティスト/アナリスト(以後アナリストに省略)は分析した結果を「伝える力」が無いとダメなのではないかと、私は思っています。
それは、複雑で難しいデータ分析から発見できる事実をいかに簡単に、わかりやすく相手に伝え、共感させることができる力です。

なぜなら、分析結果を改善に導くためには様々な関係者を「巻き込む」必要があるからです。改善のためにお金を出す人、次のアクションを考えてくれるディレクター、アクションを実際に行う他部署の人など・・・こうした方々を巻き込めなければ、多くの会社はものごとが動きません。
アナリストにはつまり、こうした「データ解析専属ではない極めて多忙な方々」に対し、「高度に複雑な概念を短時間で理解してもらう」能力も必要であり、厳しいようですがそれが出来ないと、アナリストは社内で「ただの分析で満足している人」というポジションに陥ってしまうと、私は考えています。

アナリストが関係者を巻き込む時、レポートなどの資料(スライド)を作成し、レビューするシーンが多いかと思いますが、これがわかりにくいと相手は見る気を無くしてしまい、これまでの努力が水の泡となる瞬間を意味しています。

今回、そのようなシーンを乗り越えて行かなければならないアナリストにとって、参考になる本をご紹介したいと思っています。
「外資系コンサルのスライド作成術 - 図解表現23のテクニック」
著者:山口 周 
出版社 東洋経済新報社 (2012年)

この本は、長きにわたりコンサルティング・ファームにおいて、新卒学生・中途採用者のトレーニングを担当された著者がコンサルティング分野における高度なスライド作成の技術を紹介している本です。
内容はどれも参考になるものばかりですが、特にグラフやチャートの作り方について解説されている章があります。
そこでは、そのスライドで「何を伝えたいか」によって、グラフやチャートの作り方がまったく異なる例や、工夫ひとつでみるみるうちにわかりやすいスライドになる例などが挙げられており、実際のチャートを用いて解説されていますから、これまで長くレポートを作成している方でも、振り返りとして参考になるかと思います。

また、この本ではわかりやすいスライドを作成するコツとして、「フォーカスは引き算で考える」と伝えているところも秀逸です。
これは、本当に伝えたい一点に絞り込んで、残りは大胆に単純化するか、あるいはスライド上から消してしまうという考え方です。

・伝えたいことを「絞る」こと
・最も適したグラフやチャートをひとつだけ創りだすこと

この考え方はわたしたちアナリストが陥りがちなことに警鐘を鳴らしてくれていると思います。
データ分析の業務では、一つの解を導くために高度で複雑な計算を幾重にも重ね、トライアンドエラーを繰り返しています。
時にその努力をスライドに思う存分ぶつけ、自分の分析の過程を同じようなグラフや表を何十枚も作成することで披露してしまいたくなってしまう気持ちもありますが、それは伝える相手によっては何も意味が無いことであること、「伝える」ことができてはじめて私たちの仕事が成り立つのだということを常に意識しておこう、そんなふうに思える一冊です。

よろしければぜひ参考にしてみてください。

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