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豊洲市場の第9回目の地下水モニタリング調査で、地下水から環境基準値を大幅に超える有害物質が検出され、事態は混沌とした様相になってきました。移転問題に関して何かを意見しようという意図は全くないのですが、非常に示唆の多い事例だと思うので取り上げたいと思います。タイトルにも書いたように、この問題はDMAIC(ディマイク)というデータによるプロセス改善手法がきちんとできていない好例だと考えます。土壌汚染や環境、土木の専門家は専門家会議などに多数いらっしゃったようですが、調査データ全体をどうマネジメントすべきかというアドバイザーが必要だったのに、その部分が抜け落ちてしまったのだろうと悔やまれます。

DMAICはざっくり言ってしまえば、データに基づくプロセス改善手法のことで、Define(定義)、Measure(計測)、Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)という5つのサイクルで改善活動を行なおうという考え方のことです。その英語の頭文字を取って「DMAIC」といいます。基本的にはトップダウン型で目標が定義され、その目標に関わる関連数値を正しく計測し、業務プロセスのどこに問題があるのかを分析し、改善活動を行い、それを普段から運用できるように組織的に管理する仕組みまで作る、という一連の流れで改善を進めるということです。

豊洲移転はそれが一つの最終目標で目的です。時間がなかったためか、新市場の建設と並行して環境調査が行われたのでしょう。それはそれで仕方のないことだと思うのですが、であれば、何かあった時にどうするのかを事前に決めていないということがまずおかしい訳です。どうやらそういった準備はあまりされてなかったようです。また環境基準値というのは飲料水に含まれる濃度という非常に厳しい基準のようですが、そもそも今回それが妥当なのかという議論をどれだけ行ったのかというのも、「定義」レベルの領域の話でしょう。

次に「計測」の部分ですが、調査は過去9回行っていますが、入れ代わり立ち代わり複数社によって行われているようです。調査は入札で行われるため、調査依頼先が予算の年度によって変わることは仕方のないことかもしれませんが、調査の常識で言えば、同じ会社が同じ手法で同じ品質の元で継続的に行うのが望ましいし、1社の癖みたいなものに依存しないように同時に複数社に依頼し、かつ調査手順書などの細かい調査仕様を作成し共有して監督することが望ましいと考えますが、どうやらそういうことでもないようです。

また数値が悪かった場合にイチゼロの判断で移転中止とするのではなく、どのように原因を「分析」するのか決めておくとか、汚染された土壌も地下水も地上に出てこないようにする「改善」する手立てもあらかじめ考えておくとかすれば、すべて後追いに見えてしまう現状よりもう少しよかったのだと思います。恐らく問題ないだろうという前提の、「リスク管理」の問題なのかなと想像します。

この問題の真相を深く知っている訳ではないので、勝手な想像はこのくらいにしますが、データに基づく経営とか改善とかが関わってくる場合には、DMAICの考え方を採用されることをお薦めします。ですから、ウェブサイトのアクセス解析も基本的には同じです。私が教えているアクセス解析ゼミナールでも5年前から、アクセス解析はDMAICで運用すべしということを冒頭に話しています。

でも現実によくあるのは、Google アナリティクスを標準の実装方法で取り敢えず実装し計測し始めて、データをいきなり見始めて、さてどう運用管理しようかな、となってしまうケースです。

うちはブランドサイトで特に短期的な目標はないから、取り敢えずページビュー数だけ報告していますといった、そもそもの定義ができていないケース。そして今まで使っていたサーバーログのデータと倍の数値の乖離がある、ハテ、どうしたものかといった「計測」方針がぶれてしまうケース。このようにボトムアップで始める場合も、DMAICの考え方で始めないと、経営層からは信用を失い、やり直しと差し戻されます。トップダウン型でもボトムアップ型でも、私はデータドリブン何とかと言うんであれば、DMAICのアプローチをして頂ければと考えます。

繰返しになりますが、まず何がウェブサイトにおける目標なのかを最初に「定義」付けしておく必要があります。これがスタート地点です。そして次に必要なデータを正しい方法でなるべく正確に「計測」します。正確には「情報収集して集計する」ところまでがアクセス解析での「計測」の範囲だと考えます。例えばユニバーサル アナリティクスが導入されたことで、Google アナリティクスももはやスパムからは逃れられなくなりました。汚いデータを取り除くことが分析以前の工程として必須の作業になりました。

面倒ですが、ようやくここで「分析」に着手することができます。決してここをスタート地点にして始めないでください。何ごとも最初にしっかり考え抜いてから始めることが、結果的には早道なのだということです。

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