活動報告

開催日時 2023/04/20(木)
会場 オンラインセミナー

2023年4月20日に、オンラインでセミナー「GA4活用、分析改善と広告運用の現場から」を開催いたしました。第一部では株式会社JADEの村山佑介氏がGA4を使った分析の進め方について、第二部では同社の小西一星氏が広告運用におけるGA4の活用方法について解説しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

レポート執筆 西 倫英

第一部:分析改善に導くGA4の考え方と使い方

村山 佑介 氏(株式会社JADE)

村山氏はまず、GA4のメリットとデメリットについて触れました。GA4はまだ情報も少ないですが、「慣れてしまえば怖くない」と村山氏は説明します。

まずは自社に必要なデータの洗い出しが重要

そもそも「分析」とは何を指すのでしょうか? 村山氏は「OHATPAM」というフレームワークを紹介しました。これは同社の長山一石氏が提唱したフレームワークで、以下の頭文字を取ったものです。

  • Observation(観察)
  • Hypothesis(仮説)
  • Analysis(分析)
  • Test(検証)
  • Plan(計画)
  • Action(実行)
  • Monitoring(看視)

村山氏は、観察から始まるこのサイクルを回すことが「分析(Analytics)」であると説明します。GA4で行えるのは、大きく2つ。「モニタリング(観察・看視)」と「深掘り分析(分析・検証)」です。そのために必要な指標は、ビジネスやサービス、ユーザーによって異なります。
そこで村山氏は、もうひとつ別のフレームワークを紹介します。

  • Hearing(ヒアリング)
  • Design(計測デザイン)
  • Implementation(計測実装)
  • Analytics(分析)※OHATPAM
  • Evaluation(評価)

こちらもヒアリングから始まるサイクルで、先ほどのOHATPAMは「Analytics(分析)」の中に含まれます。つまり、分析に入る前に「自社ではどのようなイベントの計測が必要か」をヒアリングして洗い出すことが必要になるわけです。それが標準のイベントで計測できない場合は、カスタムイベントの実装も必要です。

GA4でモニタリングを行う

村山氏は、JADEのレポート画面を見せながらモニタリングにおすすめの方法を紹介しました。
GA4は「ライブラリ」機能でナビゲーションを自由にカスタマイズできます。まだGA4に慣れていない人は、「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」といったコレクションを作成して使いやすいナビゲーションにするのがおすすめです。
ただし、標準では計測できない指標やディメンションは、探索レポートを使うか、スプレッドシートやLooker Studioにデータをエクスポートする必要があります。

GA4で深掘り分析を行う

続いて村山氏は、探索レポートで深掘り分析を行う例をいくつか紹介しました。
探索レポートのギャラリーにある「セグメントの重複」を使うと、BigQueryで複雑なSQLを使わなくても簡単にデータを抽出でき、大まかな状況をつかめます。セグメントの円が重なった部分をクリックすると、そこからユーザーセグメントを作ることも可能です。
「目標到達プロセス」では、ユーザーのコンテンツの閲覧順序をステップに設定できます。目標到達プロセスから「ユーザーを表示」を選択すると、ユーザーごとの個票も分析可能です。ただし、カスタムディメンションを設定しないと詳細なデータを見ることはできません。そのためにも、事前に「どのようなデータが必要なのか」をヒアリングして実装する必要があります。

さらなる活用を考える

村山氏は「オーディエンストリガーイベント」についても触れました。オーディエンストリガーイベントは、設定した条件に該当するオーディエンスが現れるとイベントが発生します。「もしGoogle広告とうまく連携できるなら、簡易的なMAツールのように使えるかもしれない」と期待を見せました。

まとめ:分析前のヒアリングと計測実装が大切

「分析しやすいGA4」とは、自社に必要なデータの「モニタリング」と「深掘り分析」がしやすい状態になっていることを指します。
モニタリングや深掘り分析を行うのにどのようなデータが必要なのかは、ビジネスにより異なります。そのため、分析の前にしっかりとヒアリングと計測実装を行うことが大切です。

第二部:GA4で広告のパフォーマンスを把握するはじめの一歩

小西 一星 氏(株式会社JADE)

小西氏は、GA4で広告のパフォーマンスを確認するための方法を紹介しました。
広告運用において、GA4はどのような役割を果たすのでしょうか。広告プラットフォームの管理画面ではプラットフォームごとにコンバージョン計測の仕様などが異なるため、全体を見るためには外部の計測ツールが必要です。GA4はその選択肢のひとつで、「ほかの計測ツールを使う場合でも、Google広告を使うのであれば、とりあえずGA4も併用したほうがいい」と小西氏は説明します。

GA4で広告計測を行う準備①:UTMパラメータの設定

まずは、広告のURLに適切にUTMパラメータを付けることが必要です。小西氏は、Yahoo広告(検索・ディスプレイ)、Meta広告、Microsoft広告それぞれでおすすめのパラメータを紹介しました。
Google広告は基本的にGA4のプロパティと広告アカウントをリンクすればOKですが、「Google広告にもYahoo広告と同様のUTMパラメータを付けるのがおすすめ」と小西氏は説明します。その理由は、GA4ではGoogle広告とその他の広告で項目が分かれてしまうことと、BigQueryにデータをエクスポートする際、UTMパラメータを付けていないとオーガニック検索として扱われてしまうためです。ただし「UTMパラメータを付けることの影響範囲はまだ検証しきれていない」と補足します。

GA4で広告計測を行う準備②:コストデータのインポート

UTMパラメータだけでは、コストに関するデータを計測できません。コストデータは、広告プラットフォームの管理画面からデータをダウンロードして、CSVを手動でアップロードする必要があります。インポートは管理画面の「データインポート」から行います。
ただし手動でCSVを準備するのは大変です。小西氏は「労力を考えたら、BigQueryのクエリの使い方を覚えるほうがいい」と強調します。なお、GA4では差分だけを追加でアップロードすることはできず、毎回全期間のデータを上書きでアップロードすることになります。

広告のレポートを確認する

データをインポートしたら、レポートで確認します。小西氏は、UTMパラメータを付けた場合にどのディメンションと指標にデータが入るのかを紹介しました。
しかし、Google広告とそれ以外の広告で指標が分かれてしまうため、すべての広告パフォーマンスを一列に並べることはできません。また、Google以外の広告ではCV単価を見られますが、Google広告のCV単価はわかりません。このことからも、広告の費用対効果をGA4で完全に把握するのはまだ課題があります。
全体のパフォーマンスを確認したければ、Looker Studioを利用する方法があります。小西氏は、セッションベースで広告のパフォーマンスを見られるLooker Studioのテンプレートを紹介し、セミナー参加者が利用できる形で配布しました。

広告をクリックしたユーザーの分析

GA4で広告を分析する場合は、探索レポートを利用します。広告を分析する際は、大きく2つの視点があります。

  • 広告を誰が見てクリックしたのか
  • 広告をクリックした後どんな行動をしたのか

小西氏は、1つめの「誰がクリックしたのか」を推測するためのヒントを紹介しました。探索レポートでディメンションに「セッションの手動広告コンテンツ」と「デバイスカテゴリ」を選択し、「セッションの手動広告コンテンツ」で広告IDを右クリックして「選択項目のみを含める」とすることで、その広告IDのデータのみに絞り込めます。この状態でフィルタから「デバイスカテゴリ」を削除すれば、「この広告はPCで見たのかスマートフォンで見たのか」を確認できます。同様にOS、ブラウザー、地域、言語、新規・既存などのデータを確認することで「その広告がどのような人にクリックされているのか」を推測することが可能です。

まとめ:BigQueryで多くのことが解決する

GA4で広告のパフォーマンスを確認するには、UTMパラメータの付与やコストデータのインポートなどの準備が必要です。ただし、Google広告とそれ以外の広告でデータが分断されてしまったり、費用対効果がわからなかったりなど、GA4だけでの分析にはまだ課題があります。
費用対効果を把握するには、スプレッドシートなどを使い手作業で計算するのもひとつの方法です。しかしBigQueryを使えば、多くのことが解決します。APIで広告データを取得する方法などは、良いベンダーを探して相談しましょう。

質疑応答

GA4のライブラリで、1人がカスタマイズした内容はほかの人にも反映される?
村山氏:ほかの人にも反映される。関係者各位で調整が必要。

Google広告の費用対効果は、広告の管理画面で見るのではいけない?
小西氏:いけないことはないが、データが違う。広告プラットフォームでは、その広告に1回でも接していたらCVとしてカウントされるが、アクセス解析側では「どの広告に触れて、ラストクリックがどうだったのか」を確認できる。各広告プラットフォームのデータを合算すると、本当のCVよりも多くなってしまう。GA4でなくてもいいが、他の広告や広告以外の流入も踏まえたうえでのCVも何かしらの方法で見る必要はある。

BtoBの場合、オーディエンストリガーイベントはどうすればいい?
村山氏:BtoBならホワイトペーパーのダウンロードなどが考えられる。複数ある場合は「ダウンロードイベントを5回発生させる」といった条件をオーディエンストリガーイベントにするのもいいと思う。

オーディエンスの作成と削除をくり返しても問題ないか?
村山氏:作成できる数自体は制限があると思うが、それに引っかからなければ問題ない。Google広告でオーディエンスのセグメントを配信先として参照していないかは注意が必要。

GA4やBigQuery、Looker Studio、サーチコンソールなどの連携をセキュアにやる方法は?
小西氏:サーチコンソールであれば、BigQueryに直接エクスポートできる。それができなければAPIを利用する以外に推奨できる方法はない。広告に関しては、データをBigQueryにエクスポートしてくれるツールを提供しているベンダーを頼るのがいい。手動でやるのは、今後の仕様変更などへの対応が大変なのでおすすめできない。

ツールによって数値のずれが発生する場合、クライアントにどういう説明をすればいいか?
村山氏:なぜ数値が違うのかをきちんと説明した上で、どの数字をモニタリングする対象に選ぶのかをお互いにぎれていれば問題ないと思う。
小西氏:特に広告周りは、今までのようにダッシュボードを作れないものが出てくる。GA4単体ではできずにBigQueryが必要な場合、そのコストについての説明が必要。

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