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活動報告
開催日時 | 2019/04/09(火) |
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会場 | 溜池山王 東京 |
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2019年4月9日、赤坂インターシティコンファレンスにてアナリティクスサミット2019が開催されました。「データ分析のその一歩先へ」というテーマのもと、約7時間半にわたって7名の講演者にお話しいただきました。300名近い皆さまのご参加をいただき、ありがとうございました。
このアナリティクスサミット2019の模様をお送りいたします。
アナリティクスサミット2019「データ分析のその一歩先へ」
主催:アナリティクス アソシエーション(a2i)
協力:株式会社インプレス、Web担当者Forum
日時:2019年4月9日(火) 10:00~17:15
場所:赤坂インターシティコンファレンス
土屋哲雄氏(株式会社ワークマン)
冒頭の基調講演では、ワークマンの土屋氏より、「データ経営」についてお話しいただきました。
ワークマンに入社して6年、土屋氏自身が行いたかったデータ経営について語りました。その背景には思いつきと経験で仕事をしていた過去があり、結果人がついてこなかった経験がきっかけです。
土屋氏自身は目先の売上などに関わることはほとんどありません。その理由は日々の売上に一喜一憂していると、データアプローチの意思決定やインフラ整備ができないためです。
データ経営の内容は主に「人」と「需要予測」について語りました。人に関しては、社員にデータ分析研修の実施をしたり、社員が利用するシステムのアクセス状況をチェックしたりといったユニークな内容でした。社員のタイプもさまざまで良く、アクセス上位10人はデータから売上UPとなる提案を店舗店長に提案ができる人材、下位10人は人間力(マンパワー)で店舗店長を説得するとのことでした。また、データ経営をするにあたって、データ根拠があるにも関わらず意見を変えない上司は難しいと話しました。
需要予測に関しては、全国の各店舗がお客さまの理想的な在庫になるように自動発注のアルゴリズムを使い、そのアルゴリズムも1つだけではなく複数のアルゴリズムを併用しています。
a2i代表の大内とのQ&Aで、「データ経営は簡単ではない。経営陣全体がデータ経営をやると信じてトップダウンで取り組むことが非常に重要」と語ったことと、「データ経営において、優れた上司の定義は部下からのデータ分析を聞いて、意見を変えられる人」という点が、本サミットのテーマ「データ分析のその一歩先へ」と合致しており、強く印象に残った基調講演でした。
本間充氏(アビームコンサルティング株式会社)
つづく基調講演では、アビームコンサルティングの顧問である本間氏より、インハウスの分析チームの作り方についてお話しいただきました。
本間氏の話は「一人の分析者がリーダーシップを発揮する」ことが組織化する上で重要、と結論を序盤に述べます。その上で日本の会社ができることとして、ジョブディスクリプションが不明瞭のため社内業務以外の業務を行っても叱責されにくく、社員同士助け合う文化がある。だからこそチャレンジしてほしいと語ります。
次に「データ分析なのか、仮説・検証なのか」について触れます。社内にある都市伝説でビジネス・インパクトのある証明問題を証明したいと叫ぶことが重要で、これには会社内でデータ分析を面白がってくれる人を探すことから始めます。もちろん、データを眺めて分析するだけでは価値が少なく、データ分析と行動がくっついている必要があると強調します。
分析チームを作るにあたっては、チーム構成が鍵となります。リーダーシップを取った後に会社内を行脚して、統計者、専門家はもちろん、プレゼン上手や役員とのパイプを持った人材など、少数(10人以下)で多様性があるメンバーを集める必要があります。特にプレゼン上手を入れることは重要で、科学的な証明によってプレゼン相手に「あっ、そうだよな」と言わせなければいけません。そのため、改善策を添えてきちんと相手に伝えることが大事だと語ります。本間氏の話の中では、分析利害関係者に関するチェックシートも公開され、実務にすぐに活用できます。
最後に「データ分析チーム⇒データ実験チーム」について話します。組織を今以上に強化するには、下記3点が大事だと言います。
1.一人から組織へ
2.組織から頼られる組織へ
3.頼られる組織から提案できる組織へ
その上で、データ分析チームだからこそデータを使って大胆な仮説を作り、実行できると強調します。上記に基づいた事例として、Eメールをやめたり、失注データを活用したりする事例を紹介いただきました。
まとめとして、組織強化で大切なことは「その組織で変革したい熱意」だと言い、基調講演を締めくくりました。
井上達也氏(アユダンテ株式会社)
ランチセッションでは、アユダンテの井上氏から、データ分析環境を構築することの重要性と、その整備にまつわる課題についてお話しいただきました。
従来の分析環境では、例えばExcelやサードパーティ製ツールを利用していれば、ツールやバージョンへの依存、要件への対応やサポートの難しさなどが課題でした。TableauなどBIツールの登場後はそのような課題は軽減しつつ、一方で大量のデータの事前整備が必要になり始めます。そのような課題や前処理を自動処理するために、アユダンテはサービス「Quick DMP」をサービス化しました。
続いて、データ分析環境の構築の際のコツや手法を紹介しました。データ設計の側面では、アウトプットをイメージしつつ、データの関連性を考えながら必要なデータをそろえていく様子を紹介。設計後のデータ収集の際にも、表現揺れやCSVフォーマット特有の問題点などへの注意を挙げます。
そうして収集したデータを「Quick DMP」で一箇所に集約します。集約することで、BIツールによるデータ結合が不要になったり、セキュリティを向上できたりといったメリットが生まれます。
DMP運用時にレポート配信をメールやチャットツールで共有するなど、目に触れる頻度を高めると組織活用が進む例を挙げながら、「Quick DMP」の紹介を終えました。
松田慎太郎氏(株式会社メルカリ)
第1部では、メルカリの松田氏より「メルカリが分析の民主化をどのように行ったのか」について、メルカリの組織構造や文化を踏まえてお話しいただきました。
冒頭に「自社で分析民主化を進めるイメージがなんとなく付く」ことがゴールだと述べます。その上で講演のサマリーとして下記の3つを挙げます。
1.分析民主化のための前提条件は何か
2.メルカリがやったことはなんだったのか
3.他社で使える知見が抽出できるだろうか
松田氏の話はメルカリ独自の「ゆるふわBI」から入ります。意思決定と比較するとアナリストが少ないため、社内で分析をできる人を増やすためにゆるふわBIを立ち上げたと言います。分析民主化の取り組み=ゆるふわBIの紹介とし、ゆるふわBIからの学びとして、冒頭のサマリーに沿った話が展開されます。
1.分析民主化のための前提条件は何か
誰でも安心してアクセスできるデータ環境(ハード面)と意思決定に分析が使われる文化(ソフト面)の2条件があり、ハード面とソフト面の両輪が備わって、分析民主化が意味を持ちます。
2.メルカリがやったことはなんだったのか
具体的な取り組みとして、Slack Channel開設、ゆるふわBI定例、運営の組織化などを挙げます。これらを行うことで人が集まる場を作り、みんなで一緒に運営することで場を安定して長期運用できます。この実現で、コミュニティの創出とコミュニティによる分析民主化が可能になります。
3.他社で使える知見が抽出できるだろうか
より良いコミュニティを作るための方法について説明があります。
1.自分が楽しむ
2.継続は力なり
3.振り返り重視
4.他部署に仲間を作る
5.権限委譲
の5点で、具体的な説明があったため、参加者の現場に落とし込める知見であるように思います。
以上をもって、松田氏のセッションは幕を閉じます。
保田昌彦氏(LINE株式会社)
LINEからは、保田氏より「新サービスを出し続けるLINEのO2Oビジネスデータ活動」についてお話しいただきました。
LINEは全てのショップの入口へというサービスコンセプトのもと、2年間で4つのサービスをローンチ、そして2019年春にはテイクアウト関連をリリース予定とのこと。O2OカンパニーとしてLINEは、ビジネスとエンジニアとで事業部と組織を分けずに活動しているという点から語り始めます。
データ活用の目的はサービス取扱高の最大化のためであり、なによりビジネスに直接関わることが重要と説きます。この背景には、「過去にデータを出して終わり」だったり、「目的は不明だが依頼を受けたからデータを出した」という課題があったりしたためと、非常に共感できる内容でした。
また、データ収集の方法においてもLINEの場合は活用方法を決めてからデータ収集を行うとのことで、まず「やりたいこと」を決める事が大切と話します。
さらにデータ加工、分析、活用のしやすさも重要視しており、その理由はセールス、マーケター、エンジニア、アナリストなどビジネスに関わる全てのメンバーにそのデータ活用目的を共有するためです。さらに必要に応じてデータ専門研究開発組織よりデータ基盤支援やデータ分析支援を受ける仕組みをもっているという内容でした。
そして、「shopping go」や「LINEデリマ」において具体的なデータ活用が語られました。新規獲得の増加という目的のもと、分析からエリア登録した翌週には注文しなくなる課題を見つけ、ビジネスチャンスと捉えたランチタイムにプッシュ通知のアプローチし、効果を出すことができたという成功事例を語りました。最後には本サミット参加限定のクーポンを配布するユニークな特典もありました。
データは活用してこそ初めて意味を持つというマインドが強く印象に残るセッションでした。
小田啓介氏(株式会社プリンシプル)
プリンシプルの小田氏からは、外部データや顧客データを連携させたGoogle広告運用の最適化の取り組み事例をお話しいただきました。
Google広告の運用は、機械学習による運用が主軸となってきました。パフォーマンスの効率化から未来予測へと活用が進む中、機械学習にとってはデータの量と質が重要です。データの質と量の担保の方法についてグーグル社の資料を引用しつつ、Google広告で取得できるデータ以外にも、カスタマイズしたコンバージョン取得や外部データを連携することによって、より質を向上できると小田氏は指摘します。
カスタマイズしたコンバージョンについては、初回購入や外部ECへのジャンプ、ページの熟読などの計測例を紹介。GoogleタグマネージャやGoogleアナリティクスでそれらを計測しGoogle広告に戻すことで、より「ビジネス成果に近いコンバージョン」に対して広告を最適化できるとします。データ連携については、実店舗の来店コンバージョンの活用やPOSデータ活用の事例を紹介。実店舗の成果を広告に反映します。
最後に、金融市場データをリアルタイムに広告運用に活用することで、より最適化された広告運用が可能になるケースもあるのではという展望を紹介しつつ、セッションを終えました。
奥谷孝司氏(オイシックス・ラ・大地株式会社)
最後の基調講演は、オイシックス・ラ・大地の奥谷氏から、小売業界で起こっているチャネルシフトとデジタル時代の顧客体験についてお話しいただきました。
店舗オペレーション変革とも捉えられやすいチャネルシフト。しかし店頭売上が目的ではないAmazon Goが示すように、それは店舗というタッチポイントの重要性に軸足を置いた「マーケティング変革」であると奥谷氏は言います。選択の場と購入の場、それぞれをオンラインとオフラインに分けた図式を「チャネルシフト・マトリクス」とし、アマゾンやZOZOTOWNなどの動向を紹介します。その上で、チャネルシフトとはオンラインを基点としてオフラインに進出し、顧客とのつながりを持つことでマーケティング要素を変革することである、と定義しました。
そこで重要になるのが時間です。顧客の「選択→購入→使用」の一連のプロセスを奥谷氏は「顧客時間」と呼び、この流れを理解してエンゲージメントを作ることの重要性を説きます。必要になるのは顧客の行動データです。行動データを把握し、販促、価格、商品すべてを最適化、オンとオフの接点をいかに途切れないようにするかが鍵を握るとし、日米のいくつかの事例を紹介しました。
企業は「選択」「購入」といった「顧客をどう追いかけるか」のポイントに意識が向きがちです。しかし顧客にとっては「使用時間」が一番長く、価値があります。いかに使っていただくかをもっと考え、顧客の行動データに基づいて一連の購買体験を提案すべきであるとします。
また奥谷氏は、企業プロダクト基点のフロー型マーケティング思考は終わり、顧客エンゲージメント基点のストック型マーケティング思考に変わるだろうと指摘します。ストック型マーケティング思考とは、Place(=チャネル)を基点としてエンゲージメントでつながりを作り、Promotion、Price、Productを変えていく仕組みのことで、これを「エンゲージメント4P」と定義。企業からのメッセージが消費者に届きにくい時代になったいま、企業は顧客のまわりにチャネルを配置して、そこでのつながりによるマーケティングにシフトしていかなければならないとしました。
最後に、デジタル時代の顧客体験について、奥谷氏がいま取り組んでいることを紹介しました。消費者にとってのネットとリアルでの買い物の違い、モバイルやアプリの価値や意味、オンオフを行き来する消費者に向けて企業が提供すべきカスタマージャーニーとはなどを、データドリブンで解き明かしたいと奥谷氏は言い、取り組んでいるリサーチモデルを挙げながら、セッションを締めくくりました。
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執筆:菊原晋作(菊原web解析事務所)、二村勇輔、いちしま泰樹(株式会社真摯)
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