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活動報告
開催日時 | 2024/03/14(木) |
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会場 | オンラインセミナー |
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2024年3月14日にオンラインセミナー「なぜ私たちは自ら生み出したKPIに追われるのか?」を開催いたしました。セミナーでは、株式会社グロースXの松本健太郎氏がデータ分析の考え方や落とし穴、その対処法について解説しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
レポート執筆:西 倫英
松本氏は冒頭でジェリー・Z・ミュラーの『測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』という書籍を紹介した上で、同氏の実体験を語りました。
「全部署でKPIを達成しているのに、会社としてのKGIを達成していない」という現象が発生し、その理由を調査しました。すると「数字に架空報告があった(KPIの嘘をつきやすいシステムだった)」「既存顧客の売上維持がKPIになかった」などの原因が見つかりました。その経験を踏まえて松本氏は「説明責任なきKPIは難破する」と表現します。
KPIは「重要業績指標」と訳され、数字で測れるものが設定されます。しかし、ダッシュボードに丸められた数字だけで、その奥にある人の行動まで見ることはできません。本来であればKGIを構成する要素をKPIに分解し、KGIが未達成な場合にその原因を特定できることが理想ですが、現実は因果関係が複雑に絡み合っており、そうではないことがほとんどです。
松本氏は「データ分析は神話のようなもの」と説明します。現実の出来事をデータに落とし込んでいる時点で多くの情報が欠落していて、不完全な状態であることを認識する必要があります。同氏は「データが不足しているから失敗する」のではなく、多くの場合で「不足しているのはデータではなくロジック」と強調します。
松本氏は、自身が使っているフレームワークを紹介しました。
ビジネス上の「意思決定」を行うために、事象を観察して「問題」(Problem)を明らかにします。1つの「問題」に対して、複数の「問い(Question)」と「仮説」のセットが存在します。このうち「問題」で何が起きているのかを正確に捉えることと、「仮説」が正しいことを裏付けるためにデータ分析が必要になります。
この関係を理解しないと、データ分析が最終的な意思決定につながらず「データの海に溺れる」ことにもなりかねません。また「データは不完全なものである」ということを忘れずに、丸められた数字だけでなく現場を観察してそれを数字で表現するという姿勢も必要です。
松本氏は「事業の成長とともにKPIは変わる、因果は変わる。その変化に気付いていますか?」と問いかけて第一部を終えました。
第二部では、Yuwai株式会社の田中広樹氏が松本氏に質問する形式で「ビジネスの世界で求められるデータ分析力とは」というテーマのディスカッションを行いました。
「そもそもデータ分析とは何か?」という田中氏の質問に、松本氏はデータ分析は「何かしらの意思決定をするためのもの」であり、先ほどのフレームワークにあった「問題」「問い」「仮説」の裏付けになるものがデータであると位置づけます。
「問題」も、事実の捉え方次第で変わります。同じ事実を見ても、その人が持つ前提や基準次第ではそれを「問題」と認識できないこともあります。松本氏は、良い問題認識になるかどうかは「事実の観察で90%決まる」と説明します。
また「仮説」というとそれが合っているかどうかを気にしがちですが、仮説を立てる段階では意思決定につながる「確からしさ」のほうが重要です。その「確からしさ」を裏付けるためにデータ分析を用います。
例えばある広告経由でコンバージョンが発生した場合も、松本氏は「心が行動を生む」と表現します。数字だけでは、広告があったから購入したのか、もともと購入するつもりでたまたま広告経由で流入したのかはわかりません。再現性のある分析のためには「なぜその行動が生まれたか」の「心」を見つける必要があります。
しかし、定性的な分析はユーザーに聞くしかなく、常に行えるわけではありません。松本氏は「少なくとも年に1回か2回は、いろいろな仮説を用意した上で定性的な分析を行い、定量的な分析とバランス良く組み合わせることが重要」と説明します。
セミナーでは、ほかにもデータ分析における全体の工程とそれぞれにかけるリソースの内訳や、データをビジュアライズする際のグラフの効果的な使い方などについても触れられ、KPI設計についての質疑応答が行われました。
▼有料個人会員、有料法人会員は、このアーカイブ動画を視聴できます。(2025年3月17日まで)
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