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活動報告
開催日時 | 2023/10/26(木) |
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会場 | オンラインセミナー |
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2023年10月26日に、オンラインセミナー「コンテンツマーケティングの本筋の話をしよう~オーディエンスビルディングの思想とその計測・評価法」を開催しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
レポート執筆
二村 勇輔
伊東 周晃 氏(株式会社JADE)
第一部は「コンテンツマーケティングの要諦2024」として、株式会社JADEの伊東 周晃 氏に講演いただきました。
Google トレンドで日本における「コンテンツマーケティング」を見ると、2013年ごろから知られ始め、2015年まで伸びたあと、2016年以降は伸び悩んでいます。この2016年は、「WELQ(ウェルク)」(医療に特化したキュレーションメディアで、急速に登録者を伸ばした後に、質の悪さから社会問題化してサービス終了)などの問題が起こった時期です。
それに対し、グローバルで見ると「content marketing」のトレンドはずっと右肩上がりで、その取り組みはポピュラーなものになっています。こうした比較を元に日本と海外のコンテンツマーケティングの捉え方について話が移ります。
コンテンツマーケティングとは、簡単に言うと「コンテンツを使って人を動かす」ことです。タイヤメーカーの出したミシュランガイドがよい例で、タイヤの売り上げを伸ばすという目的から(ある意味)はみ出したところで生成的に価値を創造しています。
『Content Marketing Strategy』の著者 Robert Rose氏がコンテンツマーケティングの説明に使っているチャートによると、オーディエンスの捉え方に二つの側面があるとしています。
この2つは静的ではなく、重なったり移動するダイナミックなものです。
伊東氏はオーディエンスビルディングを、オーディエンスとの関係を通して生成的に生まれる価値に目を向けて、それを育て発展させていく取り組みだとまとめます。
オーディエンスペルソナとバイヤーペルソナ
「バイヤーペルソナ」はコンテンツマーケティングでよく使われるコンセプトで、ある製品について検討を開始した時が起点になっています。
Robert Rose氏は「オーディエンスペルソナ」を提唱しています。バイヤーペルソナより前の段階が起点になり、製品への明確な需要が生まれていない層も含めたものになります。
伊東氏は、オーディエンスのセグメント分けを3種類提示します。
セグメント1
セグメント2
セグメント3
買わない大多数の人をどう扱うかはコンテンツマーケティングにおいて大事です。買う人/買わない人で分けるのも良いですが、買う人は一部であるため、買わない人をもてなすことに価値があります。
自分たちのブランドをオンライン上で広めていくには、増幅する読者や熱心な読者をターゲットにコンテンツを作成することが重要になってきます。
ここで「ゼロクリックコンテンツ」という戦略が紹介されます。アウトリンクせずプラットフォーム上で完結するコンテンツ(プラットフォームネイティブ)がGoogleなど多くのアルゴリズムで優先度が高くなっており、そのようなアプローチが有効というものです。実際に日本でも目にすることも増えてきています。
次に、Content Marketing Flywheelについて紹介します。
適切なオーディエンスにコンテンツを届け、ちゃんと読んでもらうことで、プラットフォームに対するシグナルが改善する。同じ取り組みをするときに次はより多くのオーディエンスに届き、サブスクライバーが増える。これがFlywheelになっていると言います。
この流れが、プラットフォームを活用しながら自社のオーディエンスを構築していくときのプラットフォームとの向き合い方です。
ゼロクリックコンテンツの計測についても触れられました。
プラットフォーム上で完結するとデータが取れなくなり、現在の私たちはインターネット以前の状況に近いとも言えます。視点を変えて、少し前のデジタルではいい加減な指標とみなされていたものに向き合い、人をしっかり見ることが必要になります。
今後のプラットフォームとの向き合い方については、プラットフォーム(Facebook、Xなど)は活用すべきですが、依存はせず、最終的には自分たちが管理しているプラットフォーム(たとえば自社のニュースレターの購読者)に移行させることが大事になります。
オーディエンスビルディングの先のビジネス的な価値を考えた時、ブランドを広めていくために重要だった「買わない人」は、今はない新たなビジネスモデルの潜在顧客であるという捉え方ができます。
オーディエンスを核にして複数の収益モデルを作るのが、オーディエンスビルディングの考え方であり、コンテンツマーケティングの本来的な捉え方です。これがコンテンツマーケティングがグローバルで常に期待がある理由でしょう。
コンテンツマーケティングとは、コンテンツを使って人を動かすことであり、色々な含みを持っているため、伊東氏にとって「オーディエンスマーケティング」なのだと、第一部をまとめました。
いちしま 泰樹 氏(株式会社真摯)
第二部は株式会社真摯のいちしま氏から、コンテンツマーケティングおよびオーディエンスの計測と評価についての講演でした。
全体を通して、コンテンツマーケティングの評価にどのような視点で向き合えばよいのか、具体例をもとに多くのヒントが盛り込まれたお話でした。
冒頭では、ニューヨーク・タイムズがDXを目指して作成した社内文書であるニューヨーク・タイムズのイノベーションレポートが紹介されます。
元BuzzFeed Japan編集長だった古田氏による2020年のブログ記事を用いて、コンテンツマーケティングの4つの戦略軸を説明します。
メディアが取るべき戦略として、コンテンツ・ディストリビューション・エンゲージメント獲得をあげつつ、最も重要な概念として、読者開発(オーディエンスビルディング)をあげました。
コンテンツマーケティングについて、ジョー・ピュリッジ氏の言葉を用いて、
「コンテンツマーケティングとは、コンテンツを制作・配信することで、ターゲットオーディエンスを獲得し、エンゲージメントを作り出すためのマーケティングである。」
と定義します。
ここではオーディエンスの獲得は重要な要素としてあげています。コンテンツを起点にして、企業が特定領域を象徴する存在としてオーディエンスに認識されることが、コンテンツマーケティングの一つのあり方です。
また、オーディエンスがいることで安定したトラフィックの期待ができるのと、オーディエンスが拡大することでディストリビューションやエンゲージメント獲得の拡大が期待できます。
オーディエンスを測る理由として、以下の3点をあげます。
次に、オーディエンスの規模の測り方について以下の3媒体ごとに細かく紹介します。
Webサイトの計測では、GA4のオーディエンス機能を使って通算n回目以上訪問のアクティブユーザーなどを把握する方法を紹介します。
GA4を活用してオーディエンスの状況を可視化することで、「コンテンツマーケティングが関与したオーディエンスの構築」の状況把握として有益です。
コンテンツの捉え方として、2014年にGoogleが動画コンテンツのマーケティング活用として提唱したコンテンツ分類のモデルとして、以下の3つを紹介します。
上記は需要や目的によって異なるため、自分たちのコンテンツの種類を上記のように分けたり、ユーザーのライフステージで分けてみることが大事です。
ユーザーのライフステージで分ける場合は、
ToFu(Top of the Funnel)
MoFu(Middle of the Funnel)
BoFu(Bottom of the Funnel)
の3分類を紹介します。
「集客」と「コンテンツを届ける」は異なるため、ユーザーに期待するアクションが大きく異なります。今のプラットフォームは、プラットフォーム内で滞在を望んでいるため、それに合わせてどういうやり方が良いのかを考える必要があります。だからこそ、オーディエンスの存在が価値を持ち始めています。
ユーザーに次のアクションとして何を期待するかと言えます。企業側がアクションを誘発することでエンゲージメント獲得につながります。Webサイトであれば、CTAなどを設けます。しかし、「短絡的な目先のコンバージョン獲得」ではなく、「段階的に受け入れてもらう」設計も必要となります。
また、エンゲージメント獲得では「関係性の分岐点」(メール登録やソーシャルメディアフォロー)を意識するのが良いです。どれだけコンテンツがシェアされたとしても関係性作りができなければコンテンツマーケティングとしては力及ばずとなります。関係性ができていないユーザーに対してどうしたらメッセージを届けられるかが大事です。
エンゲージメント獲得に関してもGA4での計測方法を紹介します。いちしま氏の講演では具体的な計測方法が紹介されます。
いちしま氏はまとめとして「オーディエンスを意識せよ」と語ります。
「オーディエンスをどれだけ構築できたか」は、コンテンツマーケティングの先行指標的KPIです。計測して把握することも不可能に近いため、ダッシュボードなどで完結するのではなく、オーディエンスからの直接のフィードバックなど数字にはなかなか表れない部分も重要視しながら期待するアクションにこだわっていくことが大事だと伝え、第二部を締めます。
フリーディスカッションでは、いちしま氏が過去に呟いていた【文化圏】について話がありました。
https://twitter.com/makitani/status/1698635148059918660
支援先の企業において、最初は小さなコミュニティだった状況から文化圏が形成されていくのを間近で見ました。
「コンテンツマーケティングって文化圏を作っていくことなんじゃないか」と感じたことから文化圏と言いましたが、伊東さんにそれは経済圏のアンチテーゼだと言われてハッとしました。
文化圏を作って、買う人は買う。楽しむ人は楽しむ。経済圏として濁っていないと思って、お客様との打ち合わせなどでは経済圏を意識しています。
関係が構築されたときの状態を伝える言葉として、文化圏という言葉はハマっていると感じました。コンテンツマーケティングに取り組んでいく時の目指す姿を表現する言葉として、経済圏というより文化圏という表現の方がぴったりだと思いました。
フリーディスカッションではその他のテーマでも盛り上がり、最後の質疑応答へと移ります。
Q.コンバージョン思考の顧客は、コンテンツマーケティングのオーディエンスビルディングを軽視する傾向があります。コンテンツマーケティングの価値を伝えても、リスティングのCV獲得の即効性が高いのでそれと比較してなかなか理解を得られないケースもあります。視座がそれほど高くない顧客も多いと思いますが、啓蒙を難しく感じています。
A.いちしま氏
コンテンツマーケティングはすぐに成果は出ないから、理解していただくことが難しいと思う。啓蒙という点でいうと、支援側であれば、一定の関係性が続いている中でなにか着実に積み上げていかなければならない。
このオーディエンスがこう伸びていますなど、増やしている事例を提示していくのが第一歩となるのではないでしょうか。
A.伊東氏
いちしまさんとほとんど一緒になるが、支援する側はお客様から何らかのオーダーがあると思うので、オーダーとの向き合いの中でやっていくのが最初の一歩目。その先の含みがある話ができるような関係性になればよいが、なかなか啓蒙は難しいと思う。
Q.コンテンツマーケティングを始めるとしたら、まず何からはじめるとよいですか?
A.伊東氏
企業の中でやる場合は、目論見を作る。半年、1年後にどういう状態を目指すのか目線を合わせることが大事。会社の目標とか達成したいものを実現するためにコンテンツマーケティングが必要だという想いを伝える。会社の予算を使ってやるということであれば、会社の意向に沿いつつ成果を見せられるような提案をしていく。その中で1、2年先などの将来の目論見を描くことが大事です。
もう一つは、リソース配分。実際の運用では、大規模にスタートすることはあまりないと思う。限られたリソースの中であれば、一つのチャネルに集中してリソースを割き、これをしばらく続けていくことが大事。手あたり次第に取り組むのではなく、自社のリソース配分をしっかりと行います。
A.いちしま氏
今ある接点があれば、それを大きくすることに注力する。
今ある接点がなければ、まずは接点を作ることから始める。
最初から色々なところに手を広げず、着手しているものが軌道に乗ってきたら他に着手するようにする。顧客とちゃんと繋がることが大事です。
以上、本編、フリーディスカッション、質疑応答と内容盛りだくさんのセミナーとなりました。
左より 寳 洋平氏(アユダンテ株式会社)、伊東氏、いちしま氏
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