活動報告

2015年4月23日、ベルサール汐留にてアナリティクスサミット2015が開催されました。合計11名の講演者にご登壇いただき、「勝利に導くアナリティクス」というテーマのもと、約7時間半にわたってお話しいただきました。また約300名のご参加をいただき、ありがとうございました。

このアナリティクスサミット2015の模様を、前編、後編に分けてお送りいたします。前編は、スタートトゥデイ清水氏、オイシックス西井氏およびP.G.C.D.村上氏の3名によるパネルディスカッション、オリックス生命保険の山本氏、イー・エージェンシー社とOptimizely社によるランチセッション、fangateの森本氏の各講演です(後編はこちら)。アナリティクスサミット2015「勝利に導くアナリティクス」
主催:アナリティクス アソシエーション
協力:株式会社インプレス、Web担当者Forum
日時:2015年4月23日(木) 10:00~17:30
場所:ベルサール汐留

 

顧客中心/データドリブン 言葉だけではなくマーケッターが本当にやっていること

株式会社スタートトゥデイ 清水俊明氏
オイシックス株式会社、warmth inc. 西井敏恭氏
株式会社ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン 村上佳代氏


左から、ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン村上氏、スタートトゥデイ清水氏、オイシックス西井氏

最初の基調講演は、ペー・ジェー・セー・デー・ジャパンの村上佳代氏をモデレーターに、スタートトゥデイの清水俊明氏とオイシックスの西井敏恭氏を加えた、3名によるパネルディスカッションでした。あらかじめ準備された10個のテーマの中から、参加者が聞きたい内容を拍手で選び、拍手(デシベル)の大きさをスマートフォンアプリで計測して、テーマが決められました。参加者が選んだのは、「データサイエンティストの役割」「顧客中心、データドリブンなど、CRM戦略における最重要ポイント」「気になる各社のKPI。最大公約数をどのように決めるのか」の3つ。

最初のテーマ「データサイエンティストの役割」について。スタートトゥデイやオイシックスに在籍するデータサイエンティストの、役割や仕事内容の一部が語られました。スタートトゥデイ清水氏は「データサイエンティストの仕事の半分はフィールドワーク」と語り、ユーザーインタビューなどを通して顧客の潜在的なニーズを聞き出し、顧客の深い理解に努めているとのこと。データにデータサイエンティストが考察を入れたものが知識であり、その知識からアクションを起こして知恵にすることが重要であると述べました。オイシックスでも同様に、毎週代表が直接お客様に会いに行きヒアリングしているとのことで、顧客の声の重要性が窺えました。またオイシックス西井氏は、社内のデータサイエンティストの役割はそれぞれ異なるとした上で、同じ商品でも季節によって質や味が変わることから「データの質的な理解」を心掛けていると述べました。

2つ目のテーマ「CRM戦略における最重要ポイント」について。清水氏は「CRMは囲い込みではない」と指摘し、囲い込みが顧客満足度を下げることがあると述べます。ロイヤルティと顧客満足度は同義語ではなく、満足度が高くても次に購入していただく保証はないため、スタートトゥデイでは「友だちのように嘘のない関係性の構築」という意識で「CFM(カスタマー・フレンドシップ・マネジメント」ととらえているとのこと。西井氏は、顧客の理解がないままでの恣意的な誘導や押しつけは無理が生じると指摘し、お客様との接点での成功体験を意識して、それを増やすことが重要だと述べます。

3つ目のテーマ「KPI」について。清水氏は、外部要因が強くコントロールができない指標は、KPIにはしていないと述べ、言い訳のできない指標をKPIとしているとのこと。紆余曲折を経ていると明かした上で、さまざまな指標を作っても結局見なくなるため、できるだけシンプルにしているそうです。一方で西井氏は「KPIだらけ」と表現し、ヘビーユーザーなど特殊な人を見て指標を作るなど、部署ごとに独自のKPIが設けられている様子を明かします。ある1ページでKPIをもとに2か月に数十回変更した例を挙げ、大きな売上や利益が見込めるのであれば、工数を投資する挑戦も重要であると説きます。

最後にトップマネジメントについて、清水氏と西井氏ともに成長企業の経営者は数字に細かいと挙げ、すべてを拾いに行ったり、見やすいデータの準備を心掛けたり、現場の声の翻訳に努めるなどの工夫が語られました。

ZOZOTOWN
オイシックス
P.G.C.D.

 

TV CMのアトリビューションとDMP活用で成長を実現した顧客に迫るマーケティング

オリックス生命保険株式会社 山本秀一氏

第2部では、オリックス生命保険の山本秀一氏から、TV CMのアトリビューション分析とDMP活用の取り組みをお話しいただきました。

まず、データ活用の土壌として取り組んでいた新聞広告の分析の取り組みを紹介します。新聞広告に個別にコードを付与し、出稿媒体ごとのROIをしっかりと計測していたとのこと。広告からの反応は長期間にわたることが多いが、数日間のデータを見ればそれ以降の最終着地が判定できるとして、数日間のデータからすぐに次のアクションにつなげていたと述べます。

それを土台に、2013年頃からTV CMのROIの可視化に取り組み始めたと続けます。外部データとWebサイトのデータ、社内データなどを紐付けて分析し、CM放映とWebサイト来訪の関係や、放送番組ごとのCPC分布などの例を、実際のデータを提示しながら紹介されました。個人の動きを初回訪問からコンバージョンに至るまで追えるため、分析からCM効果を高めることにつなげているとのこと。事前のアンケート調査では評価が高かったCMが、必ずしもコンバージョン獲得効果の高いCMではなかったことなど、興味深い例も紹介されました。

さらに、DMPの導入で目指しているのはワントゥワンのマーケティングであるとし、TV CMからの動線を明らかにして改善を繰り返し、適切なメッセージをタイミングよく出すことで、全体の売上の伸長を目指しているとのこと。一生涯においてお客様に提供できる価値が算出可能になり、予算への反映など、対面での営業では当然行えていたことをようやく適切にできるようになったと語りました。

重要なのは、お客様軸で営業やサービスに有効な情報を生成できるかだとし、対面での営業活動で得た知見(「匠」)をいかにテクノロジーに落としていくかが、今後より重要になるだろうとして、セッションを終えました。

オリックス生命保険

 

GoogleアナリティクスプレミアムとA/Bテストツール Optimizelyで成果貢献マーケティング!

株式会社イー・エージェンシー 野口竜司氏
Optimizely社 Nick Benavides(ニック・ベナヴィデス)氏


左から、イー・エージェンシー野口氏、Optimizely ベナヴィデス氏

ランチセッションでは、イー・エージェンシーの野口竜司氏からはGoogle アナリティクス プレミアムの紹介や先進的な取り組み事例を、Optimizelyのニック・ベナヴィデス氏からはA/BテストツールOptimizelyの紹介をいただきました。

Google アナリティクス プレミアムは、通常のものと比べて3つの拡張があるとして、SLA保証と限定機能利用のベース拡張、広告領域連携が広がる広告拡張、ビッグデータのエクスポートをはじめとするデータ拡張の、3つの特長を挙げました。また、動画広告の効果測定や、より進んだリマーケティング活用の事例などを紹介しました。

Optimizelyの紹介では、容易な導入、ビジュアルエディターによる柔軟で低負荷の運用、高機能といった3つの特長を、実際のデモを交えてわかりやすく説明されました。多変量解析、レスポンシブ表示やスマートフォンアプリへも対応しており、多様化する企業の取り組みやチャネルへの柔軟な適応を、印象づけました。

イー・エージェンシー
Optimizely

 

サッカーを勝利に導くデータ分析

fangate株式会社 森本美行氏

午後最初の基調講演として、fangateの森本美行氏から「サッカーを勝利に導くデータ分析」というテーマにてお話をいただきました。

最初に、サッカーにおいてデータ分析が必要なのは、起きた現象の原因を分析し改善することによって再現性を高め、勝利の確率を高めるためだとし、そのように目的の明確化が分析においてまず重要であると述べます。そして、情報はインテリジェンスに加工しなければならない、と加えます。サッカーのデータ分析では多種かつ膨大なデータを扱うが、目的を前提に考えれば、情報量を少なくして情報の質を高める必要があり、「不要なものを捨てる勇気」が大事だと指摘します。そうすることで不確実性を低くできるとのことです。

印象的だったのが、起きなかった事象を観る力を持たなければいけないと語ったところです。パス成功率が高い選手は良い選手なのか、多くのスーパーセーブをするゴールキーパーは良いゴールキーパーなのか、といった例を挙げ、「あるもの」を見つけるのは簡単だが「ない」ものを見つけるのはむずかしく、起きなかったことに「質」が隠れていると、森本氏は指摘しました。

最後に、分析自体が目的ではなく、勝つためには分析したものを「伝える力」がとても重要だとします。分析が素晴らしくても伝わらなければ意味がなく、伝える力、タイミング、伝える場所、誰に伝えるかなど、「どのように伝え、実践していくか」という人の能力がますます重要になってくる、と語ります。

サッカーを主題に様々な分析事例や映像を交えながらも、我々のビジネスの側面で同じように直面する課題や問題をいかに解決するかのヒントが多く提示された講演でした。

fangate

 

「アナリティクスサミット2015 後編」はこちら

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