【レポート】アナリティクスサミット2016 (2016/4/21)

2016年4月21日、ベルサール汐留にてアナリティクスサミット2016が開催されました。「成果に向かって速度を上げよ」というテーマのもと、約7時間半にわたって11名の講演者にお話しいただきました。300名近い皆さまのご参加をいただき、ありがとうございました。

このアナリティクスサミット2016の模様をお送りいたします。

アナリティクスサミット2016「成果に向かって速度を上げよ」
主催:アナリティクス アソシエーション(a2i)
協力:株式会社インプレス、Web担当者Forum
日時:2016年4月21日(木) 10:00~17:30
場所:ベルサール汐留

パナソニックの会員サイト CLUB PanasonicのCRM戦略について

パナソニック株式会社 中村愼一氏

冒頭の基調講演は、パナソニックの中村愼一氏から会員サイト「CLUB Panasonic」のCRM基盤としての活動や、オンラインとオフラインを含めたこれまでの取り組みをお話しいただきました。

2007年に開設し、会員数820万人、月間2.2億PVまで成長した会員サイト「CLUB Panasonic」。「CLUB Panasonic」を軸としたCRM活動でお客様満足を最大化させファンになっていただき、販売に貢献する役割を担っています。

グループの14サイトで共通のCLUB Panasonic IDを使用し、個別のCS対応をはじめとしたアフターマーケティングや全会員への告知など、お客様サービスのワンフェイス化を実現しているとします。

宣伝や販促、マーケティング活用の側面では、開設から現在までの変遷が紹介されました。2007年当初は商品開発を目的とした愛用者アンケートでの活用、2008年には商品認知を目的として商品サイトへの誘導を開始しています。商品サイトへの誘導には、愛用者登録データや嗜好データ、閲覧履歴や購入データを利用したレコメンドを行い、規模があるからこそのプライベートDMP活用に至っている様子が語られました。

2013年からは商品体験を目的としてリアル上での取り組みを開始し、レンタルやイベントでの商品体験の機会を増やしていきます。他媒体を用いて同様の取り組みを行えば多額の費用がかかるところを、「CLUB Panasonic」だけで一連のプロセスを展開できたメリットを挙げました。ネットで訴求しリアルで商品体験、その直後にキャッシュバックキャンペーンを含めた購入訴求を行い、商品体験が売上に強く結びつくことがわかったとのこと。会員限定の大型体験イベント「ファンフェスタ」でも、イベント体験を通じて高付加商品の訴求に大きくつなげられたとします。

2015年からは商品購入を目的として「CLUB Panasonicコイン」を開始、コインによるキャッシュバックや他社ポイントとの交換などでコインの流通量を増やし、O2Oの動きを活性化させる意向が示されました。

会員サイトを運用している中で重要視する施策がWeb中心のものからリアルなタッチポイント中心のものに変化していったり、郵送ダイレクトメールの効果に改めて気付いたと語るなど、運用から改善のサイクルを回している様子がうかがえました。

CLUB Panasonic

急がばまわれ データ統合・活用の壁を乗り越える本当に大切なポイント

日本航空株式会社 渋谷直正氏
株式会社ユーキャン 河内玲子氏
データマーケター 内野明彦氏


左から、日本航空の渋谷氏、ユーキャンの河内氏、内野氏

2セッション目の基調パネルは、データマーケターの内野明彦氏をモデレータに、日本航空の渋谷直正氏とユーキャンの河内玲子氏を加えた3名によるパネルディスカッションでした。あらかじめ準備された10個ほどのテーマを、内野氏が話の流れで選びながら進められました。

パネルディスカッションは「部門、データ、予算の3つの壁」というテーマからスタート。システム部門とのコミュニケーションの壁、部門ごとに分散し統合されないデータの壁、そのデータ統合の際のコストをどの部門が負担するかといった壁など、それぞれ関係し合う「壁」の例が紹介されます。その後に触れた「あいさつに始まり、あいさつに終わる」のテーマは、部門間の壁をなくすコミュニケーションとして、システム部門に感謝と貢献をしっかり伝える大切さがわかるエピソードでした。

「n=1を見落とすな」「ユーザーを妄想する」というテーマでは、「ヒト」を見る重要性が語られました。合計や平均などに丸められた数字からは気が付かない「特徴的なヒトの具体的な行動」を分析の際に見ることで、行動の理由の発見が必ずあると河内氏は指摘。「ターゲットユーザーを想定しましょう」とすると一般的なイメージしか挙がらないが、「妄想しましょう」とするととたんに具体的なイメージが挙がるといった例など、データ分析の際にどれだけ「個」のユーザーを捉えらえるかのヒントが挙がりました。

自分たちの分析業務がビジネスにどれだけ貢献しているかについて、渋谷氏は売上貢献、河内氏は合格者数とそれぞれ成果指標を用いているという一方で、「複数のデータをつなげながらヒトを見る、データの向こう側のヒトを見る」という意識が強く感じられたセッションでした。

JAL
ユーキャン

~セグメント新時代へ~ 「Googleアナリティクス360とA/Bテストツールで行う "分析→改善" 次の一手」

株式会社イー・エージェンシー 野口竜司氏

ランチセッションでは、イー・エージェンシーの野口竜司氏より、Googleアナリティクス プレミアムからリニューアルした「Googleアナリティクス360スイート」の概要や、その機能活用などの紹介をいただきました。

野口氏は、Googleアナリティクス360は分析(守り)から改善(攻め)へ展開できるツールであるとし、多くの利用者は「守り」の定期レポート作成にとどまって「攻め」に転じていない「もったいない」状態である、と説きます。そこで「もったいない分析」と称し、機会損失の量を可視化する「Custom Funnels」のレポート活用法を説明していきます。

「Custom Funnels」のレポートは、利用者がさまざまな粒度のファネルを自由に作成できます。自分が担当したキャンペーンで想定されるステップの遷移を表したレポートなど、いくつかの例を紹介し、ユーザーの離脱状況が可視化されるため、利用者一人一人の「もったいない」把握から改善活動が促進されるとします。併せてさまざまなA/Bテストや行動ターゲティングが可能な「オプティマイズ360」も紹介されました。

このようなツールの組織への定着化や各データ統合の重要性を指摘しつつ、ツールの利用で可視化からウェブ改善へ、ウェブ改善から業務改善につながるメリットをアピールしました。

イー・エージェンシー

データ分析発展のステップ データドリブン組織のつくりかた

株式会社VOYAGE GROUP 春元和正氏

午後最初のセッションは、VOYAGE GROUPの春元和正氏から、数値で語り仮説検証できる組織作りを「文化」として企業の末端まで浸透させる取り組みとその背景をお話しいただきました。

日本で一番、数値で語れるエンジニアやデザイナーがいる組織を作ることを目的に、VOYAGE GROUPは2010年に横断組織を設立、定量的な結果で判断できるA/Bテストを用いてPDCAを回し始めました。

春元氏はデータドリブン組織を作るステップとして、「理解者を増やす」「事業を伸ばす」「業務と紐付ける」の3つを挙げます。「理解者を増やす」ステップでは、A/Bテストに対する懐疑的な意見や実行メンバーが増えないといった事態に、成功事例という結果を作って説明材料にしたり各部署にキーマンを作ったりといった取り組みを紹介。「事業を伸ばす」のステップではツールのコストを横断組織が負担したり、「業務に紐付ける」のステップではファネルを軸に各部署の事業と数字を結びつける手助けをしたりなど、うまくコミュニケーションを取りながら組織に展開していった様子が語られました。

仮説検証からより高速にPDCAが回る組織になった一方で、全体を俯瞰して事業戦略を作れる人がまだ少ないといった今後の課題を挙げました。課題の整理から体系立てて改善を進めようと試行錯誤しながらいまの組織体制になったとその経緯に触れ、最初からプロセスを描いた上で進めることの難しさを挙げた上で、身の丈に合ったアプローチを今後も進めていきたいと、春元氏は今後の展開を語りました。

VOYAGE GROUP

TSUTAYA ユーザ分析の推進 組織の縦と横、どう結びつけるか?

株式会社TSUTAYA 大畠崇央氏

TSUTAYAの大畠崇央氏からは、TSUTAYA全サービスを横断しながら顧客解析をどのように推進していったのか、苦労した事例をはさみながらお話しいただきました。

各事業部で隣接した事業内容を抱えていることから生じる弊害や、事業部ごとにツールやデータベースやKPIが異なること、上層部とのコミュニケーションなど、多くの部署を抱える企業ならではの課題を紹介しつつ、それらを少しずつ解決していく様子が、大畠氏の軽妙なプレゼンテーションとともに語られました。そして最終的には、共通のツールで課題把握と改善が進められるような横断的マーケティングが展開できる組織構築にまで至ったとのこと。

データでつなぐ世界におけるマーケティング課題として、お客様のライフスタイルや行動にTSUTAYAがどうレコメンドできるか、お客様の気持ちの差の見える化が重要になってくるとし、過去データを分析するのではなくお客様の未来を考えることが自分たちの仕事であると、大畠氏は熱く語りました。

TSUTAYA

マーケティングオートメーションによる部門の壁を超えた顧客シナリオの実現

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 大山公一氏

ゴルフダイジェスト・オンラインの大山公一氏からは、どのような構想と検証を経てマーケティング・オートメーション(MA)の導入に至ったのか、どのようにシナリオを実装し運用しているのかなど、具体的な取り組みをお話しいただきました。

ゴルファー人口の減少やWeb利用率の鈍化により、新規顧客獲得が伸びず既存顧客の奪い合いが起こっていたゴルフ市場。そこに向けて取り組み始めたのがCRMでした。以前は顧客の属性やシチュエーションを無視したメール施策を行っていましたが、One to Oneの取り組みで顧客の稼働化と関係性構築を目指そうと、顧客理念や行動指針の明確化から始まったとのこと。そこから生まれた「お客様は大切なゴルフ仲間である」という理念が、行動指針やその後のシナリオ作りに反映されていったそうです。

シナリオ設計では、お客様との接点ごとに伝えるべきことを明確化、「良いゴルフ体験をしてもらう」を意識しながら最適なコミュニケーションシナリオを探っていきました。フィージビリティスタディやコミュニケーションキャラクターを設けるなど行い、会員登録から40日間23通のメールが配信されるシナリオを設計、要件定義からリリースまで半年の期間がかかったとのことです。

トップダウンのプロジェクトではなかったため現場からの反発も当初は大きかったものの、建設的なコミュニケーションを進めて、「メール配信数は大きく減らしたがコンバージョン数は増加、顧客転換率の向上」という大きな成果に至りました。

「より良い顧客体験の提供」の意識の重要さが伝わるセッションでした。

ゴルフダイジェスト・オンライン

数値ではなく「気持ち」を変えるためのコンセプトダイアグラム分析&活用事例

株式会社UNCOVER TRUTH / 株式会社Faber Company 小川卓氏
株式会社クレディセゾン 吉岡佐江子氏


左から、クレディセゾン吉岡氏、小川氏

最後のセッションは、ユーザーの「態度変容」実現のための分析とKPI設計方法を、コンセプトダイアグラムの手法を活用したリニューアルプロジェクト事例を紹介しながら、小川卓氏とクレディセゾンの吉岡佐江子氏からお話しいただきました。

ユーザーの行動や気持ちの変化を可視化して数値で行動を把握できるようにする「コンセプトダイアグラム」、これをクレディセゾンのWebサイト「永久不滅ドットコム」のリニューアルプロジェクトにどう生かして進められたかが具体的に紹介されました。

2006年にスタートした「永久不滅ドットコム」は、長年の運用から顧客目線ではなく企業目線でのサイトになってしまい、そこからの転換を意図してリニューアルプロジェクトがスタート。その対象ユーザーグループの再定義にまずはコンセプトダイアグラムが活用されました。「来訪のみユーザー」「未購入ユーザー」「購入ユーザー」などいくつかのユーザー層に分類し、その転換率をKPIとするところにまでワークショップで落とし込んでいく様子が語られました。吉岡氏は、メンバー内に共通言語が生まれて改善の意欲が高まったと、取り組みの意義の大きさを実感していた様子でした。そこからマクロな視点での状況把握とミクロな視点での詳細分析を重ね、ユーザーの気持ちの把握から改善ポイントを探っていきました。

小川氏は、態度変容を実現してビジネスゴールにつながるKPI設定が重要と語り、従来の指標に新たな視点を加えること、課題やニーズから考えること、共通言語でチームビルディングを進めることの3つがうまく進めるポイントだろうとして、セッションをまとめました。

クレディセゾン