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ビジネスにおいてデータはより重要であり続けるでしょうし、改善や戦略戦術につなげるアナリティクスも求められ続けるでしょう。では、Webアナリストは求められ続けるでしょうか?

アナリティクスの領域は、データという基盤の性格上、他の領域と密接に関わり合い、また多くを包含された立場にあります。Webの世界でも、アナリティクスはいまや広告やSEOの領域でも必須ですし、Webサイトの全体像の把握としてディレクターにも求められますし、データ取得や基盤整備としてエンジニアも活躍される領域です。DMP構築でもマーケティングオートメーションでもCRMでも、アナリティクスは重要な位置を占め、組み込まれている状態です。

では、Webアナリストが同じ熱量で求められているというと、どうでしょう。小回りを利かせて非連続な成長を目指そうとしている企業では、細分化された職業としてよりも、各事業領域のプロフェッショナルが持ち合わせるべきプラスオンの技術や知識としてより求めているように感じます。もちろん、大きな企業でデータを扱う部門があれば、専門のプロフェッショナルとして求められていますが。

ビジネスの各領域のプロフェッショナルがアナリティクスの力も持てば、自らの力でスムーズにアクションにつなげられます。理想的です。

一方、Webアナリストが組織の中で立ち回るには、他メンバーよりも高いレベルで導き出したデータの根拠を元に、他のメンバーにアクションを促せないといけません。他の領域のプロフェッショナルではないので、この「アクションを促す」のハードルが高いのです。

大阪ガスのビジネスアナリシスセンター所長、河本薫氏の書籍では、「見つける力」「解く力」「使わせる力」の3つがデータ分析者には不可欠であるというくだりが何度も登場します。『最強のデータ分析組織』では、企業に貢献する組織になるまでの努力やプロセスがつづられています。

「使わせる力」、つまりアクションです。重要なのはアクションで、そこにつなげることがデータの価値です。

アナリティクスはまだ専門性を帯びているとはいえ、コモディティ化してきました。高機能ツールが安価や無料で利用できるようになり、大量のデータを手軽に処理できる環境が身近になり、有益なナレッジは広く共有されるようになりました。『ウェブ進化論』に登場した「高速道路」は至る所に敷設され、アナリストだけでなくさまざまな人がドライバーになり、速く目的地に着くようになりました。

これからアナリストだけで生きていこうとすることは、ひとかどの人物になるがごとく、少し難しそうに感じます(個人の感想ですよ)。一方で、他の各領域のプロフェッショナルがアナリティクスの力も得てレバレッジを効かせてアクションに直結させる方が、チャンスや可能性を高く感じます。

結局は自らがどこに軸足を置いて取り組むかですし、細分化された職業として存在することが適切かどうかは組織によります。重要なのはアクションであることに間違いありません。改善や施策や戦略戦術につなげられなければ、データ分析の価値はゼロです。より多様なジャンルの人が、アナリティクスに関わるようになれば良いなと思います。

皆さん、切磋琢磨ですよ。

コラム担当スタッフ

いちしま 泰樹

株式会社真摯
代表取締役
真摯のブログ

外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。

マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。

著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。

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