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大阪ガスの河本薫さんの書籍が発売されました。「最強のデータ分析組織」(日経BP)です。

河本さんは、2014年のアナリティクスサミットで基調講演をしていただき、とても印象に残っています。
私はこの本を一回読み終わったあと、すぐ二回目を読み始めました。まだ感動の途上なので、感想を書くのは、今見たコンサートの興奮を話すのに似て、私には難しい作業です。
でも、重要な一冊になりそうなので紹介してみようと思います。この書籍はデータ分析チームの組織マネージメントの本で、データ分析の本ではありません。分析手法や統計解析については触れられてはいません。それどころか「手法」そのものは(もちろん重要ですが)データ分析プロセスの一部でしかないし、そこにこだわるとろくな結果にならないと、繰り返し書籍の中で強調しています。
「『AIを使って業務分析をしました』と説明したいがために不必要に高度な分析方法を活用することは本末転倒です。そのような迎合を続けていると、気がつけば手段を目的化してしまうようなカルチャーに染まりかねないのです」

題名や目次だけを見れば組織やマネジメント、リーダーのあり方がテーマの本で間違いありません。しかし、読後に残ったのは、「これは人はいかにして成長するかについての記録だ」という思いでした。データ分析における成功は、人が成長することで達成できる、あるいは人の成長なくしては達成できない、と言っている。リーダーやマネージメントの役割もまさにそこにあるのだ、と思えました。
「リーダーはメンバー全員の人生を預かっています。リーダーの何気ない一言や仕事のアサイン、学習する機会。その一つひとつの積み重ねが、メンバーのモーチベーションやキャリア形成を変えていきます」

印象に残るのは「ロールモデル」というキーワードが強調されていることです。成長は、目指すべき姿がある場合と、そうでない場合があるでしょう。
データ分析に取り組むビジネスパーソンは、新しい人種なので、いわゆる先輩社員などの「ロールモデル」がありません。それはむしろよいことで、ロールモデルを自分で作るのだ、と言っています。著者の河本さんが、その点に誇りを持っている行間が見えたような気がしました。
「ロールモデルがいないということは、『自らのロールを自分でデザインできる自由度がある』と考えたのです」

機械学習によるデータ分析などが注目される中、あらためてデータ分析とはすなわち「人」である、と私は読みました。そのためには継続的なチャレンジが必要であり、マネージメントは「人」をよく見て、チームメンバーが成長できるよう全力を尽くすのだと。
河本さんの著書ではデータ分析者に必要なスキルは、「見つける力(問題発見力)」「解く力(分析力)」「使わせる力(実行力)」の3つの力だと言っています。マネージメントでも似ています。チャレンジする機会をとらえ、成長するための舞台や取り組みを試行錯誤して用意し、その人が自分で成長していくのを後押しする。

私の手元には何冊か、何度も手にとって読み返す本がありますが、おそらくこの書籍もそんな一冊になると思います。

コラム担当スタッフ

大内 範行

アナリティクスアソシエーション
代表
オオウチコム

アナリティクスアソシエーション代表
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフト、Google。Googleでは2011年から7年間、Googleアナリティクスのマネージャなどを歴任。その他、SEO会社起業や日本の事業会社のデジタルマーケティングに従事してきた。
2019年からはJellyfishにVP Analyticsとして参画。
並行して2008年から協議会「アナリティクスアソシエーション (a2i.jp)」代表としてウエブ分析の普及に取り組んでいる。
仕事の傍SEOやアナリティクスの書籍も多数執筆。
主な著書『できる100ワザ SEO&SEM』、『できる100ワザ Google Analytics』、『SEM Web担当者が身につけておくべき新100の法則』など。
また、仕事の傍ら、幕末 徳川慶喜についての小説も執筆出版している。
『ケイキ君と一緒!: 幕末 最後の将軍 徳川慶喜「もしも」の物語』
幕末沼 徳川慶喜よくある質問

主な講演

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