コラムバックナンバー
株式会社真摯 いちしま 泰樹
メールマガジン2017年11月22日号より 真摯 いちしま泰樹
この数年でいくつか、有償エンタープライズ向けアクセス解析ツールでの分析案件を担当させていただいてます。そこでよく感じるのは「とても分析を進めやすいなあ」というものです。当然ではあるのですが、導入設計がかなりしっかりされていることがほとんどです。ログインユーザーやコンテンツの属性だったり、重要なユーザーアクションだったり、クロスデバイスレポートだったり、「取得されていてほしいな」と思う項目は概ね計測、準備されています。ドキュメントも整備されています。
導入した企業もそれを支援した企業も、目的に応じて必要となるだろう項目を洗い出して丁寧に導入設計されたのだと思うと、頭が下がります。
その一方で、ツール導入時に「何の目的のために、どのような軸と粒度で値を取得すべきか」をきちんと整理することは難しいとも思っています。
導入要件を決めるには、目的が必要です。少し先の将来を見越した目的は大雑把なものになりがちで、その目的を踏まえて導入設計をするにはまとまった予算が必要になり、予算を見積もるには成果見込みも求められ……。
Googleアナリティクスであれば無償で利用できることもあり、「とりあえず簡単な設定だけで」に着地することが多いのでしょう。ツールも優秀なのである程度はよろしくがんばってくれるのですが、かゆいところには手が届きません。難しいところです。
計測ツールの導入設計をしっかりしている場合としていない場合では、「いざ分析」「いざ改善」のときのスタートダッシュで確実に差が出ます。しっかりした導入設計で適切なデータが蓄積されていると、分析の際に必要な情報の多くがそろっています(もちろん追加のデータ取得が必要なこともありますが)。データもきれいです。導入がおろそかであれば、取得されていない項目があったりデータもゴミ混じりだったりで、再設計が必要になったりします。
「このような属性を取得しておけば、将来こんな改善につなげられる」という少し先の未来を見据えて、「ある程度まとまった内容の導入設計が必要だ」と訴える者がいればよいのですが。
最近ではツール連携も増えました。機械学習を元に簡単な分析を行う機能も登場してきました。そうなるとなおさら、「ある程度まとまった内容の導入設計」は必要です。適切ではないデータでツール連携や学習をさせても、そのメリットはあまり享受できません。
長年このような状態が続いていますが、5年前10年前よりも「改善」に取り組む企業が増えたいまこそ、改めてツール導入設計の重要さを訴えたいと思います。
外食チェーンストア、百貨店、Web制作会社(株式会社TAM、デジパ株式会社)、インターネット広告代理店(株式会社アイレップ)を経て独立。2010年にCinciを設立し、のち株式会社真摯として法人化。
マーケティング視点と分析データの根拠を元に、クライアントのデジタル領域のビジネス改善を支援している。a2iセミナー編成委員会。
著書に『Google アナリティクス 実践Webサイト分析入門』(インプレス)。
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