コラムバックナンバー
メールマガジン2016年10月19日号より a2i代表 大内 範行
少し前、興味深い記事がありました。
「カルビーが失敗したデータ活用 -「やりすぎKPI」は会社経営の本質を見失う」カルビーは、経営指標を現場にブレークダウンしていき、3千近いKPIとそれが一望できるダッシュボードを活用していました。細かく設定したKPIを業績評価にも反映していたそうです。その「やりすぎKPI」は、現場に響かず、業績も向上せず失敗だった、という記事です。
「かつて、われわれは、3,000におよぶKPI(重要業績評価指標)を設定していました。そこから学んだことは、『KPIを重視した経営は、現場の心に響かない』です」
この記事を読みながら、マーケティングの現場でも似た話があるのではないか、と感じました。広告の設定では、広告グループなどターゲットを細かく分け過ぎる傾向がありますし、行動データのセグメント分けも、商品、地域、参照元、ランディングページと掛け合わせていくと、すぐに千や万を超える数になります。
私にも経験がありますが、細かく分けること自体にやりがいを感じてしまう面があります。MECEと呼ばれる「もれなくダブりなく」を求めたこともありました。しかし、そうした取り組みは、プロセスが目的化して、結果に結びつかないことが多かったのです。
「きめ細かな対応」と「やり過ぎ」は、紙一重です。
労力をかけた「やり過ぎセグメント」が、効果を上げないとしたらその原因は何でしょうか?
一つのセグメントに十分なデータがなかった。そもそも分けたセグメントがビジネス目標と関連性が薄かった。セグメント分けに労力をかけ過ぎて、ユーザー行動シナリオが十分に考えられていなかった、などなど。
変化への対応も必要です。半年前に設計した分類から、ユーザー行動が変化していきますし、新たなセグメントが見えてくることもあります。
たとえばリピーターの割合が増えれば、商品別のセグメント以上に、「まとめ買い」や「定期購入」のユーザーなど顧客成熟度のセグメントの方が重要になってきます。
ソーシャルの反響から、セグメントに当てはまらない新しい流入への対応を迫られることもあるでしょう。
モバイル利用の増加は、ユーザー行動の変化をさらに加速させています。場所や利用シーンをかけ合わせていくと、人間が静的に設定するのは、もはや限界ではないでしょうか?
「やり過ぎKPI」も「やり過ぎセグメント」も、設定までのプロセスやそこまでに費やした労力が主役になってしまい、肝心のお客様視点や変化への対応力が、犠牲になっていた面があるでしょう。
もし、あなたが膨大に分類されたセグメント設定とそのレポートに時間を使っているなら、見直す時期に来ているのかもしれません。
よりビジネスインパクトの大きなセグメントを絞り込んで、ユーザーシナリオを練り直す。ユーザーの変化を読み取り、新たなセグメントを見つける。そうした作業に、より時間を使うべきかもしれません。
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