コラムバックナンバー
メールマガジン2016年6月29日号より 衣袋 宏美
年初の私のメルマガコラムは「機械学習などによる自動化が進むと、我々の仕事はなくなるのか?」でした。マクロ的な視点での話で、「付加価値の低い作業は自動化に取って代わるが、引き続き付加価値の高い仕事は減ることはないだろう」といった結論でした。
機械学習などによる自動化が進むと、我々の仕事はなくなるのか?今日の話はもう少し具体的なレベル、レポート作成の自動化に関して私がどう考えているのかをお話しします。最初に結論を言っておくと、「作業を自動化することで生まれた時間を付加価値の高い仕事に振り向けることは大いにやるべきだと思うのですが、じっくり手作業でレポート作成することで生まれる付加価値も捨てがたい」ということです。それでは詳しく説明します。
3月と4月の私のメルマガコラムは、分析の型の話を連続でしました。
分析の型はどうやって身につけていけばよいのか
分析の型にはどのようなものがあるのか
分析の型があるということは、分析レポートにもその型にあわせたレポート フォーマットがあるということでもあります。ただ分析の型の組合せは無限にあるので、レポート フォーマットも無限の組合せがあります。そのため、現実的にはレポート一式の一般化(どんな目的にも対応できるレポート)はできません。定点観測型の定期作成レポートでも、最初にそのサイトのタイプやレポート目的に応じたフォーマットを個別に作成してから、自動化に取り組まなければなりません。
そんなレポートの自動化ですが、個人的には、定点観測型のレポート作成の仕事があったとしても(最近その手の仕事は殆どしていませんが)、恐らく完全自動化的なアプローチは行わないでしょう。以下のような理由からです。
1. レポート作成自動化の主目的が作業時間短縮になってしまうと、仮説検証型で数字を見なくなるから
2. 自動化できる部分はコアな部分だけで、結局は手動で多くのデータを見て個別作業せざるを得ないから
3. 定点観測している指標やレポート フォーマットも半年もすれば更新が必要で、別の作業工数が掛かるから
1.は自動化で瞬時に作成したレポートに書いてある数字に実感を持てず、毎月見ているはずの数値自体も身につかないということです。例えば手作業で全体の数字とその内訳の数字を睨めっこしつつ、あれこれ想像しながら別のシートにコピーする。こんな作業を行いながら、「全体は変わってないけど内訳は大きく変化しているな」など「何故だろう」を繰返すことで、その数字が現実感を帯びてくるのです。あと実際に何度も同じ数値を見ていると、結局重要な数字は覚えるという意味でも「身につく」のです。
これは、次の2.に繋がっていきます。定点観測レポートでは盛り込まない部分に関しても、疑問を持ちつつデータと向き合うことで、変動の原因などを深く探究せざるを得なくなってくるので、レポートに結果的には書かなかったことも含めて深いユーザー理解ができたりするわけです。
最後の3.に関して言えば、自動化作業をすべて自分で実施する場合も、社内のエンジニアなどにお願いする場合も含めた、トータルの工数を見積もって全体最適化されていますかという話です。レポート自動作成のためには、データを定期的に自動的に持ってくる処理やそのデータから自動的にレポートを生成するプログラムを作成する必要があります。
そういったプログラミングも、例えば1年間12カ月つまり月次レポートを12回最低稼働し、100%完全自動で作成できるなら別ですが、現実的には例えば自動化比率は3割程度、同じフォーマットの使い回しはせいぜい半年(つまり6回)といった具合であれば、絶えずプログラムを微修正しなければならなくなります。そういった自動化に関わるすべての時間コストの最適化をした上で自動化できるのかというのも、重要なポイントになります。
まとめます。自動化などで作業効率を上げることは悪くないのですが、単に時間を掛けないことが目的になると、本来やるべき分析も疎かになるかもしれませんよということです。自動化はあくまで手段であって、目的ではありません。時間を掛けないことで失うものがないかも忘れないようにしたいものです。
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