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ヨーロッパのサッカーシーズンが終わろうとしています。今シーズンの大きな話題は、なんといっても、イングランドのプレミアリーグで、岡崎の所属するレスター・シティが優勝したことです。
プレミアリーグは世界屈指のリーグで、マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーなど大金を注ぐ強豪が優勝争いを続けてきました。お金をかけないチームに優勝は不可能と考えられてきましたので、この快挙は、現代のお伽話であり、将来映画や物語になるほどの奇跡だと言えます。後追い分析ではありますが、2つのポイントが大きな要因だと言われています。一つはスカウティング、もう一つはイタリア人のラニエリ監督のマネージメントです。この2つの要因には、デジタルマーケティングの仕事に繋がる部分があるように思います。

まずスカウティングですが、今回優勝に貢献したほとんどの選手は、2年前には2部以下のリーグにいた選手たちです。強豪チームが見向きもしない掘り出し物を発掘した立役者が、ウォルシュというスカウト担当の助監督です。
サッカーのスカウトといえば経験と直感だけに頼る古いタイプが多いのですが、彼は Wyscout というイタリアのベンチャー企業が開発したデータ分析システム(セグメントに細かく分けて選手のデータと映像を抽出できる)をある程度参考にし、チームにはアナリストもいて、彼らの意見も尊重していたようです。
バーディーやマレズといった今シーズン前線で活躍した選手は、スプリント回数やドリブル成功数のデータに、中盤の守備の要となったカンテやドリンクウオーターでは、ボール奪取数やタックル数などのデータに注目したようです。
経験と直感を重視するタイプのリーダーが、ある程度の客観性と透明性を取り入れて判断する。そういったコミュニケーションと決断は功を奏したと言えそうです。

しかし、スカウティングにデータを活かせばどのチームも成功する、とは言えません。今後、レスターの成功を真似して、スカウティングにアナリストを採用する流れが進むでしょうが、選手たちが本当に活躍するためには、マネージメントの力が大きいと私は思います。

もう一つの要因は、今シーズンから就任したラニエリ監督のマネージメントにあったと思います。
このラニエリ監督、今シーズンは、これまでと違い「マイクロマネージメントをしない」監督に変わっていました。従来は、細かくチームをいじる癖があり、それが悪い結果を招いていた人です。
しかし、今回のレスター・シティは、特に後半戦で、決まったスタメンと交代の手順を取り、「チームをいじる」ことは皆無でした。その代わりに選手やコーチの意見をよく聞いて、それを尊重して進めていきました。

もう一つ、今シーズンのラニエリは、監督インタビューを、選手たちへのメッセージとしてうまく使っていたと思います。選手たちにプレッシャーを与えないよう「選手には練習も試合も楽しんでほしい、そしてハードワークを続けてほしい」という趣旨のことを繰り返し言い続けていました。

その結果なのか、今シーズンのレスター・シティのゲームは、どのゲームも純粋に現場の選手たちの試合、楽しみながらハードワークをし続ける試合になっていました。
「選手たちの試合」は当たり前のように聞こえるかもしれませんが、サッカーでは、オーナーが口を出したオーナーのための試合、目先の勝利のために戦術を強制した監督のための試合、そういった試合は少なくないのです。そういった試合は、トップがマイクロマネージメントをした結果、チームに悪い作用を与え不健康な後味の悪い印象になります。
レスターの優勝が、サッカーファンにお伽話として喝采されたのは、単純な結果の驚きだけではないと思います。選手たちが純粋に試合を楽しんでハードワークをし続けた、その風景が、現代サッカーの中ではひときわ美しく見えたからでもあるでしょう。

経験と勘にデータをうまくバランスさせること、そしてマイクロマネージメントせずに、楽しんでチャレンジしようと現場に奨励し続けること、こうした勝利の要因は、デジタルマーケティングの現場やマネージメントにも繋がるものがあると思います。

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