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先日ある方とお話しする機会がありました。ご本人のことを詳しく知っている訳ではないですが、少なくともアクセス解析関係でさまざまなセミナーやワークショップなどを企画/開催されていて、解析初心者とは言えないレベルの方です。で、彼の次の発言が頭に残っています。「アクセス解析の分析の型ってあるんですよね?教えて下さい」といった内容でした。短い時間だったので、彼には私の考える分析の型のいくつかを具体的にお伝えしました。彼が確たる型を持たずに仕事をしていたというのは、深刻な悩みだったろうなと思い、いまだに頭に残っているのです。そして「分析の型」にたどり着く手前で悩んでいる方々が、大勢いるのかなと考えさせられました。

私は殆どの仕事は型通りにやるものだと思っています。新人で入ってきたら、その仕事の型を先輩から教わり、繰り返しやることで、基本動作が身につきます。やがて無意識に体が動くようになって、初めて半人前です。

私の最初の職種は経理みたいな仕事でしたが、経理の仕事というのは、税法や会計法などのルールに従って処理する、いわゆる型通りの仕事です。年に1度の予算作成と決算作業、月に一度の実績報告書の作成など、基本的に定型業務が主です。何度もその基本形を繰り返した上で、出現頻度の低い例外処理も多数経験を積み、応用力がついていきます。その応用力がついたら、ようやく一人前です。

経営コンサルをはじめ、ウェブサイト制作、運用型広告、プログラム開発、アクセス解析、すべて仕事に基本の型がありますよね。型とは言っても、コンサルなら3C/4Pみたいなフレームワークだったり、プログラマーならよく使うアルゴリズムだったりと、さまざまですが。

つまり毎回ゼロから考えて仕事をするなんて非効率なことは、新人でもない限り殆どの人はやっていないはず。難しい案件というのは、例えて言えば、基本動作で3までこなせるけど、そこから最後の10まではカスタマイズが必要といった具合に、例外の多さで難しくなるだけです。根本は仕事を型に嵌めてこなしているということに他なりません。

アクセス解析の場合について考えてみましょう。それは本業のウェブ制作のついでかもしれませんが、毎月レポートを出しているのであれば、基本の型を作ってやっていくべきものと思います。だから型は重要なのです。問題なのは、アクセス解析の分析の型を一体誰から学ぶのかということです。

残念ながら教わる先輩がいない場合もあるでしょう。ただ今の時代は、よいセミナーや良書も沢山あります。アクセス解析本は、良書であれば、さまざまな分析の型をまとめて構成されているはずです。またセミナーに参加すれば、本で学んで自分なりに整理した型を確認したり、他の人のやっている型を自分なりに取り込むこともできます。

あとは、とにかくアウトプットすること。レポート作成なら、とにかく作ってみること。私はよく「質より量」という話もしますが、基本の型をなぞりながらも「この表は意味があるのだろうか」などと考えながらレポート作成の作業を繰り返すことで、アウトプットの質を高めていくしかありません。セミナーで学んだことも、実際やってみて腹落ちしたものを取り込んで自分の型にしていけばよいと思います。

さてそんなセミナーの役割について書いたのですが、私が企画しているセミナーはその役割が果たせているのか自問しなければなりません。基本的には分析の型の一部分に焦点を当てて、セミナーの主題とし、講師に話をしてもらっている積りなのですが、そういう意図が皆さんに分かりやすく伝えられているのかと、改めて振り返る必要があるなと思います。

また自分の丸二日の講座(アクセス解析ゼミナール)も、内容は分析の型をしっかり教えている積りなのですが、告知ページを見直してみると、「分析の型を整理して教えます」みたいなフレーズはどこにもありません。口頭では、「さまざまな分析のための引き出しをお伝えしました」などという格好をつけた表現を最近はよくするのですが、「分析の型」といった簡潔で伝わりやすい言葉をもっと使うようにします。
「衣袋宏美のアクセス解析ゼミナール」

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