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サイトの評価指標として、特にメディアサイトの評価指標としての「ページビュー(PV)」は本当に適切なのかどうか、他に代わるものはどこかに転がっていないのか、誰か指標を開発しないのかといった議論は、ずいぶん前から繰り返されてきました。1990年代後半から2000年代前半の「ホームページ」でも、その後の「ビジネスブログ」、ここ6~7年の「オウンドメディア」の興隆においても、ざっくりとした価値を表すのに、まずは「ページビュー」が用いられています。その議論は、2016年初頭にも少し話題になりました。

ウェブ関係者よ、PVの話をするのはもう止めよう – WIRED.jp

「ページビューはもう意味をなしていない、新しい指標を作ろう、考えよう」という主旨です。これまでの議論を改めてまとめた内容だと、私は捉えています。

まず、複数のサイトの比較評価としての指標と、自社サイトの効果測定や分析の際の指標は、別のものとして考えなければなりません。複数サイトの比較評価は「媒体としての価値の算出」が目的で、一方自社サイトの効果測定や分析は「ユーザーに期待していることと実際との乖離の確認」が目的だからです。今回の話は前者の話として進めます。

私個人としては、複数のサイトを比較評価するには、いまは現実的にはページビューしかないだろう、と思っています。

いまあるさまざまな指標をこねくり回して組み合わせても、妥当なものが登場するとは思えないのです。性格の異なるメディアサイトを比較評価するので、ある程度の割り切りが必要というのもあります。

もし新しい指標の候補を挙げるとすれば、「接触時間」が鍵を握ると考えます。ただこれにはいまよりもう少し技術の進歩が必要ですし、一方で割り切って用いることに変わりはありません。

メディアサイトの評価は、やはり「接触時間」がキーになるだろう – a2i

「ページビューが最適でないのはわかっているが、現実的にはそれを使わざるを得ないですよね」という意見もいくつか見られました。

とはいえPV以外は話ができる状況にすらない – いまさっき思ったこと

そう、もともとページビューは昔からぼんやりした指標でした。同じ「1ページビュー」でも状況によって価値はまったく異なりますし、意図的に数値を増減できる指標でもあります。

とはいってもページビューって意外に大雑把な指標なんですよ – makitani.com

接触時間が評価指標の一候補になると考えているとはいえ、例えば「平均滞在時間」「平均セッション時間」が重要かというとそうでもありません。

セッション概念についての最近の違和感 – Marketing Sphere

近年Googleが提唱するように、「Micro-Moments」と呼ばれる細切れの可処分時間を使った「意図」を伴う行動を、「セッション」という単位でとらえ続けることは必ずしも適切ではないのでは?という指摘です。スマートフォンの利用が増えるにつれ、ユーザーの一連のオンライン行動は短くなっているからです。

特にメディアサイトであれば、1ページの記事単位での行動が圧倒的に中心になり、積極的な回遊誘導を図ったとしても、ユーザーとしては細切れの可処分時間の中でしか行動してくれません。

加えて、該当のメディアサイトだけでなく他のプラットフォーム上でも「その情報」に触れることは、今後確実に増加します。従来でも他媒体での記事転載による情報流通は多くありますが、企業によるTwitterやFacebook、Instagramの活用は、オウンドメディアとしての役割を大きく担っています。今年1月14日には、Facebookの「Instant Articles」が日本でも開始とのアナウンスがありました。

情報流通チャネルの多様化が進み、「自社メディアサイトの滞在時間」はユーザーによる企業情報への接触時間のほんの一部にすぎなくなります。

ウェブサイトが「母艦」でなくなりつつある時代に – a2i

自社サイトだけがメディアではなく、そして母艦でもなく、ソーシャルメディアや他媒体で展開されるコンテンツに触れることも「接触」であれば、「そのブランドの情報に触れた機会、総接触時間」を見据えて、各々を計測してはじめてうっすら見えてくるものがある、そういう状態なんだと思います。

その中で「サイト上のユーザー単位の月別総接触時間」をなんとかざっくりでも算出できれば、「1日24時間、1か月約720時間」という一人あたりの等しい持ち時間を考えると、メディアサイトの「媒体としての価値の算出」として「ページビュー」よりも良さそうだと考えます。

ただし、もう少しだけ未来の話ですけれども。

「自社サイトの効果測定や分析」は、これはこれで別途考えなければいけません。改善や次の方針につなげなければいけませんから、「ユーザーに何を期待しているのか」を軸に、追うべき指標をいくつかそろえていくことになります。これは別のお話。

複数のサイトを比較評価するには、いまは現実的にはページビューしかないでしょうし、もうページビューでいいんじゃないでしょうか。

「価値のあるページビュー」「価値のあるトラフィック」を意識してサイトを運用していれば、ページビュー以外の評価が後からついてくると思います。そう心掛けていたいです。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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